「ちゃんこ」と聞けば鍋、多くの人はそう答えると思います。
でも「ちゃんこ」とは鍋だけではなく力士が食べる食事のことはすべて「ちゃんこ」と呼ぶのです。
そんな一般的な常識を否定しつつ、今日は「ちゃんこ」の世界を舌ではなく、文章を読んで目で、頭で、堪能いただきたいと思います。
「ちゃんこ」の言葉の由来と「ちゃんこ鍋」のはじまり
ちゃんこと聞けば鍋を想像するのが一般的、でもこの『ちゃんこ』と言う語源が気になりませんか。
江戸時代に長崎へ巡業に行った際に、中国から長崎に伝わった板金製の鍋「チャンクオ」の料理法を取り入れたことを端に発して、その「チャンクオ」が訛ったとされる説がひとつ。
若い力士が料理番をおやじさんの意味でもある「ちゃん」と呼び、それに親しみを表す接尾語の「こ」が付いてちゃんことなった説がひとつ。
でもそれ以外に諸説あり、確実なものはない中でこの先代佐渡ケ嶽親方(元横綱琴桜)が教えてくれた説が妙に納得してしまうのです。
「親方と弟子が一緒に食べるからだよ」。往年の時代劇であるあの「子連れ狼」観たことがあれば思い出すはず、乳母車に乗った幼子の大五郎は、父を「ちゃん」と呼んだ。
ちゃん(父)とこ(子)で食べるから「ちゃんこ」妙に納得。
そして、みなさんが持つ「ちゃんこ=鍋」の起源は明治時代に遡ります。
当時、活躍した十九代横綱・常陸山(ひたちやま)が所属する出羽海(でわのうみ)部屋には数多くの力士が所属しており、料理の準備や配膳に大変な手間を掛けることが出来ず、一度に大量に作ることができる鍋料理が日常的に食べられるようになったと言います。
魚や肉、野菜がたっぷり入った鍋料理は栄養バランスの面でも優れており、力士にとって理想の食事でした。
その噂は各相撲部屋に広がり、やがて力士たちの定番料理として浸透し、部屋ごとに秘伝の味が受け継がれていったのです。
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ちゃんこのしきたり
力士の食事は昼と夜の1日2食、朝5時に起床して食事を食べずに稽古を始めます。
稽古が終わったらお風呂に入って汗を流した後、11時30分から13時頃にその日初めての食事、ちゃんこを食べます。
その後は稽古をすることなく各々の時間を過ごしますが、この時間こそが体中に栄養素を巡らせる重要な時間なのでしょう。
良く寝て良く食べる、よく稽古をし、良く食べる、これぞ相撲取りの生活サイクルです。
昼寝?をして夜のちゃんこは18時30分ぐらいからなので、食事の時間は優に17時間は空けると言うことになります。
流行りの17時間ダイエット法なるものがありますが、力士の食生活を覗くと説得力があるのかないのか(笑)
相撲部屋にはちゃんこ長とちゃんこ番の力士がいて班を作り交代制でちゃんこを作りますが、ちゃんこ番は幕下以下の力士が務めるのが普通ですが、部屋によっては出世を外れたベテラン力士がちゃんこ長を務めるところもあるようです。
そして、ちゃんこを食べる順番は番付の世界により厳格に守られています。
親方、関取衆(十両以上の力士)、後援会の方などお客さんが先に食べる、その後に幕下以下の力士や若い力士たちが食べる。
かつては若い力士たちがちゃんこ鍋を食べる頃には、中身がなくなり汁だけになっていることもあったそうですが、今の時代はそんなことがあったら即刻週刊誌物の事件になってしまいます。(苦笑)
ちゃんこ鍋のレシピあれこれ
相撲取りは土俵に手を付いたら負け、だから牛や豚など四足歩行の肉を使ったちゃんこ鍋は縁起が悪いため長く避けられてきました。
だからなのか「手を付かない」鶏を具材や出汁に鶏を使うことが慣習でした。
が、現在では毎日食べても飽きないように工夫もされて以前はご法度の豚肉や牛肉も使われるようにもなりました。
ちなみに、鶏を使用しちゃんこ鍋は「ソップ炊き」とも言われ、ソップはオランダ語の「soep」つまり英語のスープのことであり、鶏ガラスープをベースに鶏肉や野菜、油揚げなどを入れて醤油と酒などで味を調えます。
ゲン担ぎもあり今でも相撲部屋では本場所前夜と千秋楽には牛や豚は使わずに、鶏を使ったソップ炊きを食します。
鍋料理は皆さん周知のとおり、体が温まる、野菜がたくさん食べられる、栄養バランスが良い、そんな観点から力士の主食はやはり鍋が多くなります。
今では外国人力士も増えてそのレシピもかなり変化を遂げてきました。
かつて土俵を賑わせたハワイ出身の曙関や武蔵丸関が誕生したことで、ちゃんこにウインナーやソーセージを入れるようになったのは画期的だと言われました。
また米に馴染むのに苦労した琴欧洲関は、米がボソボソして味がないと言ってご飯に牛乳をかけて食べていたそうな。
またモンゴル出身力士の多くは白飯に何かをかけると言うのが慣習にないそうでカレーライスが嫌いなのだとか。
あんこも好きではないらしくかの白鵬関がこの世で一番嫌いなものは小豆だそうです。
今や様々な国から角界入りする、また時代も変貌を遂げて食材も多種多様な広がりを見せる、各部屋には名物のちゃんこもあるようで、その部屋ごとに来客を迎えるおもてなしにもなりますね。
おわりに
「私も相撲部屋でちゃんこのご相伴に預かりたい」などと思いませんか。
各相撲部屋のホームページなどをチェックすると部屋の見学会なども実施しているようですが、今はコロナ禍でさすがに厳しいかもしれません。
でも皆さんが本格的な相撲部屋のちゃんこを味わえる可能性もありますので、諦めずにアフターコロナを楽しみに待ちましょう。
それまでは両国界隈などにたくさんある元相撲取りが営むちゃんこ屋さんにぜひ足をお運びください。
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