いよいよ開幕するサッカー・ワールドカップ(W杯)ですが、それに先立ち、様々な競技規則を定める国際サッカー評議会(IFAB)の年次総会が、今回の開催地であるカタールのドーハで実施されました。
その席上、新型コロナ禍によって過密日程を強いられる選手のケガなどを減らすため、交代枠を従来の3人から5人に拡大した過去2年間の特例について、今後恒久化することを決定しました。
なお、ハーフタイム以外での交代は3回までで、今回のW杯でも同様に適用されます。
この記事では、選手の交代枠とその背景などについて詳しく解説します。
交代枠変更の概要
W1杯カタール大会では、従来の交代枠から大きくレギュレーションが変わりました。
概要は以下のとおりです。
1. 最終登録メンバー:23人から26人に増加
2. 予備登録メンバー:35人から55人に増加
3. 試合中の交代枠:3人から5人に増加
最終登録メンバーが3人増えると同時に、ベンチの控え選手もまた、それまで12人だったものが15人に増えます。
この変更によって、世界でもトップレベルの選手を多く抱える強豪国が有利となる可能性が指摘されています。
2020年に発生し、世界的なパンデミックとなった新型コロナウイルスの感染拡大によって、サッカーにおいても各種の大会で過密日程が懸念される中、各国のリーグ戦やカップ戦で、交代枠5人制が主流となりました。
この影響により、今回のカタールW杯でもこの変更が採択され、従来よりも3人多い26人を最終登録できるよう定めたのです。
交代枠が増加することによって、監督の采配に大きな影響を及ぼします。交代機会はハーフタイムを除いて最大3回までなので、5人の交代枠をフルに使うためには、どこかのタイミングで必ず(物理的に)2人を代える必要があり、指揮官の手腕が今まで以上に問われることになるのです。
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交代枠の歴史と遍歴
IFABが公式に選手交代制度を導入したのは1953年のことです。
当初は負傷した場合のみで、また交代は最大2名までと定められましたが、早くもその2年後である1995年には、ポジションに関係なく最大3名まで交代可能となりました。
ただし、いつでも、また何度でも交代できるわけではなく、交代回数はハーフタイムを除く3回までとされました。
交代できるタイミングはプレーの停止中で、交代前には主審に交代理由を説明してから、ピッチ上で交代する選手がピッチの外に出てから入ることが出来るものです。
また、交代してピッチの外に出た選手は、延長戦やPKの際もピッチに戻ることは出来ず、こうしたルールを守らなかった場合にはイエローカードやレッドカードの対象になります。
さらに、2018年のロシア大会からは、延長戦に突入した場合には4人の交代が可能となりました。
カタール大会からは5人交代制へ
今回のW杯カタール大会に際して、6月13日に開催されたIFABの年次総会で、5人交代制の恒久化を決定しました。
この変更により、試合中の様々な戦術面での影響が予想されます。
その主な背景は、前述のとおり、2020年に世界的パンデミックとなった新型コロナウイルスの感染拡大を視野に、出場選手の健康を守るために暫定的に5人交代制を採用したことが挙げられます。
そして、この制度をパンデミック収束後も維持することを定めたものです。
選手交代枠が戦術に与える影響
今回の選手交代枠の変更により、各チームとも試合における戦術的な幅が大きく広がりました。
具体的には、より多くの選手を入れ替えることが可能となったため、監督は早い時間帯から積極的に選手交代というカードが使えるようになったのです。
その結果として、試合の展開やスピードに変化があらわれ、試合がよりエキサイティングで面白くなったというファンが多くいます。
この制度変更を評価する声がある反面、批判もあります。選手層の厚い有名クラブがより有利になってしまうという批判です。
具体的な事例を日本のJリーグでみると、制度変更直後の今年6月18日に行なわれたJ1第17節の川崎フロンターレ対北海道コンサドーレ札幌の試合が挙げられます。
この試合では、2-2の同点のまま迎えたゲームの終盤に川崎の監督が相次いで交代カードを切り、マルシーニョ、レアンドロ・ダミアンという主力級のFWを投入しました。
その結果、川崎は一気に3点を連取して勝利し、対戦相手である札幌の監督は、試合後の記者会見で5人交代制はビッグクラブに有利だと発言したのです。
こうした事例もありますが、それが全てだとも言い切れません。やはり、5人交代枠をいかに効率的に活用するかが、チームや監督としての新たな腕の見せどころとなるでしょう。
ワールドカップでの展開
IFABが公式に定める選手交代枠の変更ですが、サッカーW杯の本大会で採用されたのは、1970年のメキシコ大会からでした。なお、各地域での予選ではそれ以前から交代枠変更が認められていました。
その後すぐに、この選手交代枠は戦術的に活用されるようになりました。
メキシコ大会で選手交代を活用したのが西ドイツ(当時)のヘルムート・シェーン監督でした。当時西ドイツには3人の優れたウイング選手がいたため、彼らを順次交代させながら活用したのです。
なお、W杯では当初の選手交代枠は2人でしたが、1998年のフランス大会からは3人の交代が認められることになりました。
まとめ
サッカー・ワールドカップにおける、選手の交代枠変更とその遍歴などについて解説しました。
一般のファンにとっては、選手交代枠が試合に与える影響をそれほど大きなインパクトとして実感できないのが正直なところですが、チームや監督、また実際にプレーする選手にとっては、この制度変更(交代枠拡大)をいかに有効に活用するかによって、勝敗に影響することになるでしょう。
今回のW杯でも、各チーム選手交代に注目して、楽しく、そして薀蓄(うんちく)を傾けながら観戦したいものです。
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