パリオリンピックは陸上競技のスタジアムがメインスタジアムとは呼びにくい大会です。
それは開会式やマラソンのゴールが陸上競技スタジアムにならないから。
とはいえ陸上競技のほとんどの競技と閉会式が行われるため、陸上競技のスタジアムが最も注目を集める場所なのは間違いありません。
今回は、パリオリンピックの陸上競技スタジアムについて解説。
どのような特徴を持っているのか、そしてちょっと奇妙なトラックの秘密についてもご紹介します。
【パリオリンピック】陸上競技スタジアムの概要
パリオリンピックの陸上競技スタジアムは、スタッド・ド・フランス。
直訳してフランス国立競技場とも呼ばれるこのスタジアムの名前を聞いて、スポーツファンなら別の競技、別の大会を思い出すのではないでしょうか。
スタッド・ド・フランスの歴史①:サッカー
スタッド・ド・フランスは、フランスで最も大きなスタジアム。
1998年に開催されたFIFAサッカワールドカップのメイン会場として建設され、大会では準々決勝、準決勝、決勝が行われました。
決勝では開催国のフランスがジダンの活躍などで3−0の快勝。スタジアムが興奮に包まれたのを覚えている方も多いはずです。
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スタッド・ド・フランスの歴史②:ラグビー
スタッド・ド・フランスは、2007年にはフランス、ウェールズ、スコットランドをまたいで行われたラグビーワールドカップの決勝戦の会場にもなりました。
この結果、このスタジアムはサッカーとラグビー両方のワールドカップ決勝戦が行われた初のスタジアムになりました(2つめは日本の横浜国際総合競技場)。
また2023年のラグビーワールドカップでも準々決勝以降の試合がスタッド・ド・フランスで行われています。
陸上競技も可能な設計
スタッド・ド・フランスはサッカーのフランス代表とラグビーのフランス代表のホームスタジアム。ワールドカップに限らず代表戦のほとんどはこのスタジアムで開催しています。
しかし日本の国立競技場と同じように、当初から陸上競技も行える設計。
2003年には世界陸上のメイン会場にもなっています。
そして今回はオリンピックの陸上競技の会場に。その結果、サッカーとラグビーのワールドカップ決勝に加えてオリンピックの陸上競技のメイン会場になる初のスタジアムとなっています。
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【パリオリンピック】以前のスタジアムは?
パリでオリンピックが開催されるのはこれで3回目。既存の施設を最大限利用することをテーマにしている大会ですが、以前のスタジアムを再利用はしないのでしょうか?
前回大会の会場は?
前回の開催は100年前の1924年。
なんとその当時のメインスタジアムも今回使用されます。
それは、スタッド・イヴ・デュ・マノワール。
1907年に完成したスタジアムで、1924年に改修して大会のメインスタジアムとなり、1938年にはFIFAワールドカップの決勝戦も行われました。
今でもサッカーやラグビー、陸上競技の会場として使われている歴史あるスタジアムは、今回はホッケーの会場になります。
前々回の会場は?
1900年にパリで開催された第2回オリンピックは、パリ万国博覧会の一環として開催されたもの。そのためか大会はなんと5カ月間にわたって行われました。
競技もバラバラに開催されたため、メイン会場ははっきりせず、それどころか多くの競技者は万博に参加したことは知っていてもオリンピックに参加したと気づきもしなかったそうです。
ちなみにパリ万国博覧会の入場口となったのはコンコルド広場。
ここには今回、アーバンパークが作られ、ブレイキン、BMXフリースタイル、スケートボード、3X3バスケットボールが行われます。
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【パリオリンピック】陸上競技スタジアムの秘密
もともと陸上競技が行える設計とはいえ、オリンピックの開催に合わせてスタジアムは改修されます。
大きく生まれ変わるのはトラックを含めた競技エリアです。
濃淡2色の紫の競技場
スタジアムで目を引くのは、珍しい紫色の競技場。
濃淡2色で、薄い紫はトラック競技や跳躍、投擲などの競技エリア。濃い紫はトラックの外側に設けられている技術エリアになります。
この濃淡2色の紫色はテレビに映ると選手を最も際立たせてくれるそう。
どのように見えるのか、その効果にも期待が高まります。
競技エリアの製作会社は世界新記録を量産
この競技エリアを製作するのは、イタリアのモンド社。
2020東京オリンピックを含むオリンピックや世界選手権など、世界規模の競技大会の陸上競技エリアなどを製作してきた会社です。
モンド社では選手たちが記録を向上できるように製品を改良。多くの選手と提携して記録を取り続け、自己ベスト更新で製品の質をチェックしながら開発を進めています。
その結果、1972年以来モンド社の陸上競技トラックでは300もの世界新記録が生まれているのです。
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トラックの下の秘密
トラックの改良によって記録が向上する秘密は、表面の下の層に設けられた空気の層。選手が強く踏み込むと、トラックから反発力を得られる設計になっているのです。
実際に2020年の東京オリンピックではトラックに新しい高分子材料の粒子を使用。その後もモンド社では常にトラック用資材の分析を行っています。
その理由は、最新世代のシューズとの相性。シューズが改良される度により最適な反発を求めてトラックの改良も行われるのです。
パリオリンピックでは東京のものをさらに改良した素材が登場。記録の向上が期待されています。
ヨーロッパ選手権に注目
選手にとってはいきなり新しいトラックは不安なもの。まずはトラックの特性に慣れておく必要もあります。
そこでローマのスタディオ・オリンピコとスタディオ・デイ・マルミに同じ素材のトラックを製作。
2024年6月7日から12日まで開催されるヨーロッパ選手権で使用されることになっています。
ヨーロッパの選手たちはここでトラックの感触を体感した上でオリンピックに挑めるのです。
まとめ
オリンピック史上最もサステナブルな大会を目指すパリ大会。
陸上競技のトラックも再生可能な材料の使用率を、2012年のロンドン大会の35%から50%以上に増やしています。
さらにトラック表面のゴムはパラリンピックでの車いすや義肢の使用も考慮しているそう。
パリオリンピックとパラリンピックでは、紫色のトラックにもぜひ注目してください。
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