今の日本には、多種多様のスポーツがあり、私達はテレビや動画を通じて日々それに触れる機会があります。
ワールドカップやオリンピックの中継を、家族で一緒に見て応援したり楽しんだり、一喜一憂した経験があるという人は少なくないことでしょう。
そんな数多くのスポーツの中で、最も子供達に人気のあるスポーツは何でしょうか。
仮に人気のスポーツを5つ挙げてみた時、ほぼ確実に入ってくるであろうと思われる競技があります。それが野球です。テレビで中継される機会も多く、また日本各地で盛んに子供達のクラブ活動が行われています。
中学校や高校でも、野球部が存在しない学校は極めて少ないことでしょう。
1871年(明治4年)に来日した、アメリカ人のホーレス・ウィルソン氏が当時の東京開成学校予科で教え、その後全国的に広まったとされている野球は日本でも長く愛されてきたスポーツです。
子供と親、あるいは祖父と孫でキャッチボールをしたことがある、という経験がある人も多いのではないでしょうか。
そんな野球を元にして、さらにもっと幅広い人が楽しめるようにと工夫されたスポーツがあります。
それが今回紹介する、その名も“ベースボール5”なのです。
ベースボール5の起源・歴史について
日本でも海外でも、人気の高いスポーツの一つとして知られる野球。しかし、いくつかの理由から、満足に野球をすることができないという人は少なくありません。
まず、広いグラウンドが必要であること。昨今は小学校も中学校も高校も、校庭が狭いという学校は多いことでしょう。
広いフィールドを必要とする野球をやるためには、他の部活動とグラウンドの取り合いになってしまう、なんてことも少なくありません。
また、練習するためには道具が必要です。しかし野球の道具は値段が高いものが多く、その上消耗品であるため何度も買い替えなければいけません。
ボールは安いものでも一つにつき240円~350円程度かかり、バットも一本につき2万円程度の価格がかかってしまうことも多いです。道具を揃えるお金がない、貧しい子供達や選手はなかなか手が出ないスポーツと言ってもいいことでしょう。
そんな中、生み出されたのが“ゴムボール一つあれば誰でもできる”というベースボール5という競技でした。
2017年に世界野球ソフトボール連盟(WBSC)より野球・ソフトボール振興の一環として発表されたスポーツです。
元々はキューバの街中にて遊ばれていた、クアトロ・エスキーナス(4つの角という意味)という手打ち野球が原点となっているとのこと。
アフリカなどの、道具を用意することが難しい子ども達でもプレイできるように、そしてソフトボールを一人でも多くの子ども達に知ってもらうために生まれた競技なのです。
同年の11月には、初めてのショーケースがキューバの首都ハバナにて開催されています。
日本におけるベースボール5の歴史について
世界野球ソフトボール連盟(WBSC)が第3の競技として取り入れ、都市型のストリートスポーツとしての定着を目指しているというベースボール5。
この競技自体が生まれたのが2017年ということもあり、日本に来てからもまだまだ日が浅いスポーツの一つだと言えます。
具体的には、日本に初めて伝わってきたのは2019年だったとされているのです。
WBSC公認インストラクターで女子野球日本代表の六角彩子選手(埼玉西武ライオンズ・レディース)によると、このスポーツを知った時、野球にはないスピード感と手軽さに惹かれたとのこと。
野球とベースボール5では試合展開の速度がまったく異なり、野球の1試合の10分の1程度の早さで試合が終了することもあるのです。
2020年1月には、六角選手は茨城県日立市で開催されたイベントに出席してその魅力を伝えました。
以降、日立市の中学校では全学年で体育の授業にベースボール5が取り入れられることになったとのこと。
まだ新しいスポーツですが、野球とソフトボールに続く第3の競技として、少しずつ日本でも普及活動が進められつつあります。
ベースボール5と関連のあるスポーツ
ベースボール5と切っても切り離せない関係にあるのが、なんといっても野球というスポーツです。
その起源は古代にまで遡るとされており、先史時代に既に、野球のボールと同じくらいの大きさの石がヒトにより使用されていたことが確認されています。
古代エジプトやその他の地方では、王が球を棒で打った上で、飛び方により農作物の豊凶を占っていたことが判明しており、これが野球の原型となったのではという説があります。
中世の頃にもなると、12世紀頃のフランスにて「ラ・シュール」という競技が誕生しました。2チームに分かれて、足や手、棒などを使って敵陣にある2本の杭の間にボールを通すというゲームだそうです。
今日のあらゆる球技の原型とされるスポーツであり、死傷者が出るほど危険であるにもかかわらず人気が非常に高かったと言います。
ベースボール=野球という名前でルールが制定された当初、この競技は21点先取制だったと言われています。
しかしあまりにも時間がかかりすぎるため、1857年に「9回終了時に得点が多かったチームの勝ち」ということに変更になりました。
その後も、野球は様々な理由からルールがどんどん改定されていったスポーツでもあります。
最初は投手には下手投げのみが許可されていた、打者がコースを指定できた、というのも昨今の野球からは考えられないルールの一つでしょう。
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・野球の歴史・競技人口・ルール・大会【スポーツ辞典】
ベースボール5の競技人口について
正確な競技人口はわかっていません。
しかし、最小限の道具とコストで行える第三の野球として注目を集めており、すでに世界69か国に広がっているとのことです。
そのうち19か国では、自発的に新しい試合を開発しているそうです。
ベースボール5のルールについて
まず、1チームにつき最低でも9人が必要な野球よりも人数が少ないのが特徴です。1チームは5~8人で編成されます。試合は5人で行われることになります。
また、この競技の特徴は男女混合でも行えることでしょう。そういった大会の場合は、守備時に男女各2名以上が入らなければならないというルールが設けられています。
内野の形は正方形で、塁間は13メートルになります。
外野にはフェンスが置かれ、フェンスがない場合線を引くなどローカルルールが認められるケースもあるそうです。フェアゾーンは18メートル×18メートルで、バッターボックスは本塁の後ろになります。
一塁には衝突回避のため、ベースが2枚置かれるそうです。
そしてルールそのものは野球に非常に近いですが、最大の特徴は打者が自分でトスしたボールを掌か拳で打つということ。
打球はフェアゾーン内の本塁より3メートル以上離れた地点で、少なくとも1回はバウンドさせなければならないというルールがあります。
また、フェンスオーバーやフェンス直撃もファウルアウトとなります。ファウル打球を打ってしまった場合もアウトになります。
また、野球よりもイニング数が少ないのも特徴です。5イニング制で行われ、同点の場合はタイブレーク方式の延長戦を行います。
3回終了時点で15点差、4回終了時点で10点差がついた場合にはコールドゲームとなるのです。
ベースボール5の国際的な大会について
2018年の時点で、欧州やカリブ地域で国際大会がすでに開かれているようです。
また、メキシコでは2020年に第1回WBSC Baseball5ワールドカップが開催される予定となっていました。
誕生からこれほど早く世界大会が開催される競技は、他に類を見ないことでしょう。
コロナ渦によって大会は延期になるという災難に見舞われましたが、このスポーツそのものの注目度を推し測るには充分であると言えます。
さらに、この競技は2026年ダカールユースオリンピックの公式種目にも追加されています。ますます人気が高まっていくのは間違いないことでしょう。
世界から見た日本のベースボール5の強さのレベル
現在、新型コロナウイルスの影響でワールドカップ、ならびにアジアでの大会が相次いで延期されている影響で、日本代表が世界と戦う機会に恵まれていない状況にあります(2022年3月11日現在)。
しかし、東京2020組織委員会主催の2020 FAN PARKにて、Tokyo2020パラリンピック期間中にWBSCがBaseball5体験ゾーンを設置したところ、来場が東京都在住者に限られたにも関わらず大盛況であったとのこと。
ベースボール5が日本人に広く周知され、その魅力に多くの人々が気づき、続々と有望な選手が生まれる日も近いのかもしれません。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
野球・ソフトボール競技がユース・オリンピック種目となるのは、ベースボール5が初めてであるそうです。
オリンピックスポーツとしては初の男女混合競技でもあり、新たな可能性に注目されています。
野球よりもローコストで、狭い場所でも男女問わずに気軽にできるというベースボール5。興味を持った人は、さらに詳しくチェックしてみてください。