長い歴史を誇るボート競技ですが、最も盛んといわれているのは欧米諸国です。
日本でもボート競技は一定の歴史と伝統があり、有名な「早慶レガッタ」に象徴されるようなビッグイベントも開催されています。
その一方、実力的には体力に勝る欧米諸国に肩を並べるには至っていませんが、競技人口は年々増加し、親しみも増してきています。
ボート競技の歴史や競技人口、主な国際大会や日本の現状などについて解説します。
ボートの起源・歴史について
ボートの起源と歴史をたどれば、あらゆる現代スポーツの中でも最も古い伝統を誇る「レジェンド競技」であることが明らかです。
北欧の海賊がレースを競ったのがその起源ともいわれ、その事実を裏づける証拠として、紀元前1400年に古代エジプトの石碑にボート競技の模様が書かれているようです。
その後、欧州を中心としてボート競技は普及・拡大し、18~19世紀頃に現代ボート競技の基礎が築かれました。
近代スポーツとしてのボート競技は、プロスポーツではなく、あくまで「アマチュア」であり、代表的なオリンピック競技として親しまれています。
事実、オリンピックでは1900年の第2回パリ大会(女子は1976年のモントリオール大会)から採用されている伝統競技です。
なお、ボート競技で必ず用いられる「レガッタ」とは、定期的に開かれる大会を意味する普遍的な呼称で、その起源は14世紀頃からベネチアで行なわれたゴンドラ競技が由来といわれています。
日本におけるボートの歴史について
長い歴史と伝統を誇るボート競技ですが、日本に伝わったのは19世紀後半、1869年のことといわれています。
当時、横浜港に寄航していた英国の軍艦乗組員が、同地の在留外国人とボートレースを行ったのがきっかけとなり、その14年後(1883年)に、現在の東京大学と筑波大学の間で対抗ボートレースを行ったのが日本のボート競技のスタートとなったようです。
更に関東の大学を中心に普及が進み、有名な早稲田大学と慶応大学の対抗戦「早慶レガッタ」は20世紀初頭の1905年に始まりました。
ボートと関連のあるスポーツ・派生したスポーツ
ボートから派生した競技としては、「ソーラーボート」と「人力ボート」が挙げられます。
ソーラーボートは太陽光を活用して行うもので、理解しやすい一方、「人力ボート」とは?
一見、ボートはそもそも人力では?と思いますが、イメージとしてはボート上に自転車などを載せ、それを漕いで進むものです。
これらの競技は一部の愛好家に親しまれ、正式な競技にまで発展しています。
日本での競技会としては、1989年に静岡県の浜名湖で「第1回浜名湖ソーラー大会」が実施されたことを契機に、その後1994年には人力ボート競技も加わり、定期的に開催されています。
運営母体としては、競技の発展を図るとともに、海外団体などとも連携し、一層の充実を図るため、1991年に浜名湖ソーラー協会が立ち上がりました。
その後、ソーラーボートと人力ボートを統括する団体として、同協会と日本財団(夢の船コンテスト・人力部門)が協力し、1994年に日本ソーラー・人力ボート協会が発足、現在に至っています。
また、障がい者が親しむボート競技として「パラローイング」があります。
同競技の歴史は比較的新しく、2002年にセルビアで開催されたボートの世界選手権で、アダプティブ種目(障がい者部門)とし障がい者競技が開催されたのが始まりです。
その後、2013年に競技名を現在のパラローイングへ変更し、健常者競技と同時に開催されています。
基本的なルールや操作技術は、健常者と全く同一に設定されています。
参考:公益社団法人日本ボート協会
https://www.jara.or.jp/para/about.html
ボートの競技人口について(日本国内、世界)
ボート競技はその歴史と背景から、英国などの欧米諸国で非常に高い人気を誇っているので、競技人口も豊富です。
その一方、日本では競技人口が限られており、ある調査によれば、2012年頃における国内でのボート競技人口(協会登録選手ベース)は国内全体で8,400人で、その内訳は大学が約2,700人、高校が約3,700人、中学では約600人、そして実業団と一般が1,400人程度とされていました。
その後、高校生については、2015年に全国高等学校体育連盟が公表した資料によれば、高校全体で5,124人(男子3,426人、女子1,698人)となっており、全体としても1万人は優に超えている状況だと思われます。
世界各国のボート競技人口はそれぞれの国ごとに確認する必要がありますが、例えば強豪といわれるイギリスでは、全土に550ものクラブがあり、登録会員数が50,000人とされています。
その他主要欧米諸国でも、それぞれ数万人規模の競技人口があると推測されます。
ボート競技のルールについて
ボート競技は、テレビなどで観戦する際にわかるとおり、湖などに設定された直線のコースで、選手がそれぞれオールを使用したボートを漕いで最速タイムを争います。
ボートの最大の特徴は、進行方向に向かって背中を向けて、ゴールと反対方向を見ながら漕ぐ点にあります。
そして、オリンピックをはじめとする主要な国際大会では、全種目で距離が2,000メートルに設定されています。
オールには、選手が左右に1本ずつ持って漕ぐ「スカル」と、1本だけ持つ「スウィープ」の2種類があり、それぞれの種目となっています。
男女とも、スカルには1人で漕ぐシングルスカル、2人でのダブルスカル、そして4人のクオドルプルの3種目があり、スウィープでは2人のペア、4人のフォア、そして花形ともいえる、8人の漕ぎ手と司令塔であるコックス1人の9人によるエイトの3種目があります。
また、選手の体重に応じて競技に階級もあり、軽量級では男子1人あたり72.5Kg以下・平均体重70.0Kg以下、女子は同様に59.0Kgと57.0Kgと規定されています。
ボートの国際的な大会について
ボートの国際的な大会といえば、何といってもその頂点はオリンピックです。
また、もワールドカップや世界選手権が定例で開催されており、各国がその威信をかけて世界1の座を競います。
その他にも、年代別のU19/U23世界選手権や、地域別には日本も参加するアジア競技大会(今年は19回目)などが開催されています。
ちなみに、国内の最高峰である全日本選手権大会は、今年が第100回のメモリアルイヤーとなります。
世界から見た日本女子ボート&日本男子ボートの強さのレベル
日本選手の強さのレベルを図るひとつの物差しとして、最高峰の大会であるオリンピックでの成績を振り返れば、最上位成績としては2000年のシドニー大会と2004年のアテネ大会でそれぞれ、男子が6位と健闘しました。
その後、多くの選手が予選を勝ち抜いてオリンピックに出場しましたが、特筆すべき成績は残せていない状況です。世界の壁はまだまだ高いといえるでしょう。
2019年のワールドカップ(Ⅰ:トップレベル)に出場した日本人選手のエントリー種目は、男子ではシングルスカルと軽量級ダブルスカル、女子も軽量級ダブルスカルの3種目となっています。
この大会で2020東京オリンピック本戦出場を目指しましたが、残念ながら叶いませんでした。
やはり日本選手はどうしても欧米の強国に比べれば体格のハンデがあるので、今後も軽量級を中心に期待をかけたいものです。
まとめ
ボート競技について解説しました。
みてきたように、長い歴史を誇るボート競技ですが、日本では競技人口もまだまた他のスポーツと比べると少なく、一般的なファンの注目度も大きくない状況ですが、欧米諸国では非常高い人気を誇る競技です。
今後、日本でも取り組みを強化し、世界の第一線で勝負できるようになれば、ますます魅力が高まることでしょう。
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