どこよりも熱くお届けするスポーツコンテンツ

NEW POST

スポスルマガジンの最新記事

スポーツを探求する

【送りバント】成功率や戦略としての有効性について調査!

野球の試合中によく見られるプレーの中には、「意味がない」「むしろ愚策だ」とよく言われているものがあります。
それは送りバント。
なぜ送りバントは意味がないと言われるのでしょうか。
そして本当に愚策なのでしょうか。
今回は、送りバントの成功率や有効性について調査しました。

【送りバント】とは

【送りバント】成功率や戦略としての有効性について調査!①送りバントは、走者を2塁または3塁に進塁させるためのバント
公認野球規則では「9.08 犠牲バント・犠牲フライ」の項目で規定されています。
それによると、0アウトか1アウトの場面で、打者のバントによって1人または数人の走者が進塁し、打者は1塁でアウトになるのが基本的な犠牲バント(送りバント)。
打者が野手のエラーでセーフになったときも送りバントとされますが、最初から明らかに自分もセーフになることを狙ったときはセーフティバントと記録されます。
つまり自分がアウトになる間に走者を進塁させる目的で行うバントが送りバントなのです。

【関連記事はこちら】⇩
【セーフティバント】正しいやり方と8つのコツを調査!
【スリーバント】意味や定義について!どんな状況で発生するの?

送りバントの目的

アウトが1つ増えるのに走者を進塁させる目的は何でしょうか。
それは得点圏に走者を置くため
2塁と3塁は得点圏と呼ばれ、ここに走者がいると次の1打で得点が入りやすいと考えられています。
そのためアウトを増やしても走者を進める戦法が取られるのです。

【送りバント】成功率と有効性

【送りバント】成功率や戦略としての有効性について調査!②

一般的に得点が入りやすいとされる得点圏ですが、本当にアウトを増やして送りバントを行う意味はあるのでしょうか。
具体的に検証していきます。

成功率

まずは送りバント自体が成功する確率。
2022年のセ・リーグの送りバント成功率を例に挙げると、最高は中日の83.9%で、最低は巨人の71.0%
およそ7〜8割の成功率になります。
一般的な打率が3割弱であることを思えば、悪くはないと言えるかもしれません。しかし2〜3割の確率で相手にアウトを献上しているとも言えます。

有効性

続いては作戦として意味があるのかの検証です。
送りバントをする場合とバントをしない強行策の場合では、どちらがその後の得点につながりやすいかを見てみます。
最も送りバントを選びやすい無死1塁という場面で比較したところ、送りバントした場合の得点確率は39.1%。これに対してバントをしなかったときの得点確率は44.2%でした。
つまり送りバントは5%も得点の確率が下がるということです。
「でも打者のヒットが期待できない場合には意味があるのでは?」と思う人は多いはず。
そこで打者の能力別に比較してみると・・・どの打力の場合でも送りバントした方がその後の得点確率は低いという結果に。
「でも相手投手の能力が高くて打てない場合には意味があるのでは?」と反論したい人も多いのではないでしょうか。
そこで相手投手の能力別に比較してみたところ・・・やはりどの能力の相手投手でも送りバントした方がその後の得点確率は低いという結果になったのです。
このようになってしまう理由は、ヒッティングが成功しにくい打者や相手投手ではバントの成功率もやはり低くなるから。
極端に打率の悪い打者ではこれが逆転することもありますが、その損益分岐点となる打率は、なんと1割3厘
これほど打率の低い打者がそもそも試合に出るとは考えられません。

得点期待値

現代の野球はデータ重視。
その中には「送りバントが成功しても意味はない」というデータもあるのです。
それは得点期待値というもの。ある場面で平均何点入ることが期待できるかという値です。
例えば無死満塁の得点期待値は「2.103」。
これは無死満塁の場面なら平均2.103点入るということです。
そこで、送りバントが行われる場面でその送りバントが成功したとして得点期待値がどのように変化するかをまとめてみました。
それぞれ横に進んで、得点期待値がどう変化するかを見てください。

バント前の状況得点期待値バント後の状況得点期待値
無死1塁0.8041死2塁0.674
無死2塁1.0711死3塁0.917
無死1•2塁1.3861死2•3塁1.337
1死1塁0.5002死2塁0.317
1死2塁0.6742死3塁0.345
1死1•2塁0.9042死2•3塁0.524

なんと全ての状況で、得点期待値が下がってしまいます
つまりたとえ送りバントが成功してランナーを進めても、アウトカウントが増えることでむしろチャンスを減らしているということです。

高校野球の送りバント

上に紹介した得点期待値はプロ野球でも高校野球でもほとんど同じ。
送りバントをすると得点は入りにくいという結果になっています。
しかし唯一違うのは、無死1塁から1点でもいいから入れたいときの成功率。
プロ野球の場合には得点確率が減少していましたが、高校野球の場合、無死1塁では45.9%だった得点確率が1死2塁では47.5%ほんの少しだけ向上しているのです。
送りバント失敗の可能性も考慮すると一概に有効だとはいえませんが、どうしても1点が欲しい場面では愚策だと言い切ることもできないのです。

送りバントをしてしまう心理

データ的には無駄なことが明白なのに送りバントが減らない理由は何でしょうか。
それは人間には最悪の事態を避けたいという心理があるからだと言われています。
バントではなく強行策を選んだときの最悪の事態はダブルプレー。得点期待値で比較すると、無死1塁は0.804ですが、ダブルプレーで2死ランナーなしになると0.093となり、ほとんど得点チャンスがなくなります。
そのためトータルでは強行策の方が得点の確率は高いのに、最悪の場面を避けてバントを選んでしまうのです。
また人間には報酬を得るまでの道のりが近い方が魅力を感じるという心理もあります。
これは1日後に100円もらうよりも10分後に50円もらう方を選んでしまう心理。
ランナー1塁から得点を入れるには、多くの場合ヒットがさらに2本必要ですが、ランナー2塁なら1打で得点の可能性もあります。人はこの「1打出れば得点」という状況により魅力を感じてしまうのです。

まとめ

データ的には損をする確率の方が高いことが分かる送りバント。
しかしそれでも多くの試合で見られる背景には、ダブルプレーという最悪の事態を避け、一打得点という言葉に賭けたい人間の心理がありました。
理論上は意味がないと言われても、プレーするのが心を持った人間である以上、送りバントが無くなることはないのかもしれません。

【関連記事はこちら】⇩
【野球】バントの種類を目的別にご紹介!メリットやコツも調査!
【野球】なぜ乱闘するの?減少対策とペナルティについてもご紹介!



  • この記事を書いたライター
  • ライターの新着記事
でかむ

でかむ

スポーツで人生楽しむ自然派ライター

筋トレとアウトドアをこよなく愛するライター。某FM局の作家時代、筋トレマスターに師事し、トレーニングブログを3年間で100本以上執筆しました。

  1. 【パリオリンピック】バスケットボールの組み合わせや日程を解説!

  2. 【パリオリンピック】暑さと天気は?危険な熱波への対策もご紹介

  3. 【パリオリンピック】世界の注目選手|世界新記録が期待できるのは?

PAGE TOP