長いシーズンを勝ち抜き、日本一に挑戦するプロ野球の日本シリーズ。
これまでに数々の名場面が生まれ、いつまでも記憶に残る名勝負が繰り広げられてきました。
今回は、日本シリーズの名勝負をご紹介。
今もプロ野球ファンの語り種になっている対戦の顛末を、球団の対決と個人の対決、2つの視点で解説します。
日本シリーズの名勝負|球団編
日本シリーズの名勝負、まずはセ・パ両リーグの球団の意地がぶつかった名勝負・名試合をご紹介します。
1986年・西武vs広島
1986年の日本シリーズは、史上唯一の記録を持っています。
この年引退を迎えた山本浩二選手と鉄人衣笠幸雄選手が中心となり円熟の野球を見せる広島に対し、西武はスーパールーキー清原和博選手が注目を集めたチーム。後に名将と呼ばれる森祇晶監督は就任1年目でした。
注目の対戦は、初戦が延長14回の引き分けとなった後、広島が3連勝で王手。
ところがここから西武が踏ん張ります。後がなくなった第5戦の延長12回裏、工藤公康投手が執念のサヨナラヒットを打って勝利。これで勢いを取り戻した西武は三連勝でついに逆王手をかけたのです。
その結果、西武と広島の対決は日本シリーズ史上初の第8戦に突入。
最終戦は3-2で西武が勝利し、西武は3連敗のあと4連勝という劇的な優勝を決めたのです。
1992年・西武vsヤクルト
1992年の日本シリーズは、それ以前の6年間で5回のシリーズ制覇を果たしていた王者西武ライオンズに万年Bクラスだったヤクルトスワローズが挑むという対戦でした。しかも2位に大差をつけて3年連続の優勝を決めた西武に対して、ヤクルトは4球団が優勝を争う大混戦を辛うじて制した状態。事前予想では圧倒的に西武有利と言われていました。
ところが蓋を開けると第7戦までもつれる展開に。
しかも西武が王手をかけた第5戦から野村克也監督率いるヤクルトが脅威の粘りを発揮し、残り3試合はすべて延長戦になったのです。
結局、7試合中4試合が延長戦という大接戦を西武が制しましたが、森祇晶監督は「このときほど先の見えない厳しい戦いを強いられたことはなかった」と発言しています。
また第1戦でヤクルトの杉浦享選手が決めたホームランも球史に残る一発。シリーズ史上唯一の代打サヨナラ満塁ホームランとなっています。
1966年・巨人vs南海
1966年といえば、巨人V9の2年目。日本シリーズは4勝2敗で巨人が勝利し、全体としては大熱戦というほどではありませんでしたが、その中の一戦が日本シリーズ史上最も面白かった試合と言われています。
この試合は、巨人が3勝1敗で王手をかけた第5戦。
7回までは息詰まる投手戦となりますが、巨人は8回表に長島茂雄選手の2ランホームランで先制します。
しかし直後に南海の小池兼司選手が2ランを放ち同点。
その後9回から13回までは再び両軍ともゼロ行進となり、14回に再び長嶋選手が均衡を破るタイムリーを放ちます。
これで巨人はついに勝ち越しとなり、優勝目前。
しかしその裏、1死から四球の後、ケント・ハドリ選手が逆転サヨナラホームランをレフトスタンドへ叩き込んだのです。
南海は劇的勝利を収め、地元での巨人の日本一をなんとか阻止しました。
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日本シリーズの名勝負|個人編
日本シリーズでは、チーム同士の攻防だけでなく、個人の名勝負も生まれています。
1971年・王貞治vs山田久志
巨人V9の7年目だった1971年、下馬評では調子を崩していた選手が多いジャイアンツよりも阪急ブレーブスの方が有利と言われていました。
1勝1敗で迎えた第3戦。史上最高のサブマリンといわれる阪急の山田久志投手は8回まで巨人打線をほぼ完璧に抑え込みます。
そして阪急の1点リードで迎えた9回裏、ここまで凡退していた王貞治選手は、塁上にランナーが出てセットポジションになれば山田投手を打てると考え、柴田勲選手に「なんとしても塁に出てくれ」と頼みます。
柴田選手は粘りを見せ、四球で出塁。その後、長嶋茂雄選手がショートのグラブのわずか先を抜く安打を放ち、チャンスを広げます。
当時こういった場面では王選手を歩かせることも多かったのですが、山田投手は迷わず勝負を選択。
その結果、王選手がカウント1-1からの3球目を右翼スタンドに放り込み、巨人が逆転サヨナラ勝ちを決めたのです。
この打席は「日本シリーズ史上屈指の名勝負」と呼ばれています。
1958年・神様、仏様、稲尾様
日本シリーズの個人の活躍でこれ以上はあり得ないとされているのが、1958年の稲尾和久投手の活躍です。
西鉄ライオンズの稲尾投手はこの年のシーズンでなんと72試合に登板し、33勝10敗、防御率1.42を記録。最多勝、最優秀防御率、MVPなど多くのタイトルを獲っていました。
そして迎えた巨人との日本シリーズ。3連敗してしまった西鉄の三原脩監督は、第3戦で完投した稲尾投手を第4戦でも先発させます。
この試合に6対4で勝利し踏みとどまると、続く第5戦でも三原監督は稲尾投手をリリーフに。延長10回裏になんと稲尾投手がサヨナラホームランを打って再び勝利します。
さらに第6戦にも先発登板した稲尾投手は見事に完封勝利。
これで3勝3敗とすると、驚くべきことに翌日の第7戦にも稲尾投手が先発し、6対1で勝ってしまったのです。
ほぼ稲尾投手1人の力で勝った西鉄は3年連続の日本一を達成。
神様、仏様、稲尾様という言葉が世間に広まり、近年の「神ってる」や「村神様」の元になりました。
まとめ
今回ご紹介した他にも、江夏の21球や「巨人はロッテより弱い」からの意地の4連勝など、名勝負がいくつもあった日本シリーズ。
1年を締めくくる大一番だけに選手たちは死力を尽くして戦います。
次はどのような名勝負が見られるのか、日本シリーズからはけっして目が離せません。
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