クラシックバレエは、数多くのジャンルがあるダンス中でも特に芸術性が高いとされているバレエの一種です。
ではそのバレエにはどのような種類があり、なぜ「クラシック」と呼ばれる種類があるのでしょうか?
今回は、クラシックバレエについて調査。
その定義や特徴から、あの太陽王ルイ14世も深く関わったという歴史、そして違いがよく分からないという人も多いモダンバレエとの違いまでを詳しく解説します。
クラシックバレエとは
まずはクラシックバレエとは何か、という話からご紹介します。
バレエとは
クラシックバレエの解説の前に、そもそもバレエとはどのような芸術なのでしょうか。
ダンスは「踊る」という意味。「バレエ」は踊りの一種で、広く捉えればもちろんダンスの一種ということになります。
しかし厳密にはただのダンスではないのがポイント。
1760年にノヴェールというフランスの舞踊家が「舞踊とバレエについての手紙」を発表し、バレエとは何かを概念化しています。
それによるとバレエは「セリフや歌はなくダンスだけで表現する『舞踊言語』で物語るもの」となります。
つまりダンスだけで物語を表現するのが特徴なのです。
クラシックバレエとは
バレエの中でもクラシックバレエは古典バレエとも訳されますが、この「古典」という言葉が誤解の元。
古典と言っても実は誕生当時のバレエではなく、意外と近年のバレエを指しています。
ではバレエの歴史を解説して、クラシックバレエの正体に迫りましょう。
クラシックバレエの歴史
バレエが誕生したのは16世紀。ただしこのときはまだ現代人がイメージするようなバレエの形式ではありませんでした。
「バレエはイタリアで生まれ、フランスで育ち、ロシアで花開いた」と言われています。
16世紀にイタリア宮廷の宴で貴族たちが踊っていたのがバレエのルーツ。
1533年にフィレンツェのメディチ家の娘がフランス王アンリ2世に嫁ぎ、イタリア宮廷文化がフランス宮廷に入りました。そしてイタリア風の貴族の宴の踊りがフランスで「バレエ」と呼ばれるようになります。
ちなみにバレエはかなり長い歴史を持ったダンスのように思われがちですが、ベリーダンスなどはるかに長い歴史を持ったダンスもたくさん存在します。
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ルイ14世の庇護で見せる踊りに
当初のバレエは貴族たちが踊って楽しむものでした。
そのような中、太陽王と呼ばれたルイ14世はバレエを大変に愛好。14歳のときに「夜のバレエ」という作品で太陽の役も演じた彼はバレエを庇護し、1661年に王立舞踊アカデミー(現在のパリ・オペラ座バレエ)を設立します。
その結果、バレエの技術は格段に進歩。職業ダンサーが登場し、バレエは劇場でプロのダンサーが踊るものになっていきました。
ロマンティックバレエ
19世紀になるとフランス革命、産業革命を経てヨーロッパはロマン主義の時代を迎えます。
この時代は個人の感性が尊重され、神秘的なものや異国への憧れが芸術の主題に。1832年の「ラ・シルフィード」では妖精役がつま先立ちで浮遊感を表現して舞いました。
他にもこの時代には人間ではない存在が登場する作品が数多く上演され、「ロマンティックバレエ」と呼ばれるジャンルが確立します。
ロシアでのクラシックバレエの誕生
19世紀になるとフランスのロマンティック・バレエの振付家たちがロシアに渡ったことでバレエはロシアにも広まりました。
その中の1人がマリウス・プティパ。
彼はマリインスキー劇場の振付家兼バレエ芸術監督となり、「眠りの森の美女」、「くるみ割り人形」、「白鳥の湖」など40あまりの作品を発表しました。
それによって現在「クラシックバレエ」と呼ばれる形式が誕生。
つまりクラシックバレエの成立は19世紀のロシアということになります。
クラシック・バレエの発展
マリウス・プティパのバレエが評判になると、より高度なテクニックを披露できるようにチュチュは丈が短くなり、外に張り出した「クラシック・チュチュ」が登場。
さらにクライマックスで踊られる「グラン・パ・ド・ドゥ」の形式が確立しました。
このグラン・パ・ド・ドゥは男女二人が入場するアントレ、男女で踊るアダージョ、それぞれのソロのヴァリエーション、再び二人で踊るコーダの順。
また主役以外のダンサーたちの見せ場となるディヴェルティスマンが充実し、現在のクラシックバレエの形が確立しました。
クラシックバレエの定義
「クラシック」とは、規範や形式美を重んじる古典主義的という意味。
しかしクラシックバレエは16世紀の古典的バレエのことではなく、マリウス・プティパが確立した様式性の高いバレエのことを指すのです。
そのため狭義のクラシックバレエという定義では、より古いロマンティックバレエとクラシックバレエは区別されています。
ただしより広い意味での「クラシックバレエ」という使い方も存在。この場合は17世紀後半フランスで生まれ19世紀末までに完成されたバレエ全般を指す言葉となります。
しかし「クラシックバレエをやっている」と言えば、プティパが確立したバレエという意味になるのが一般的です。
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クラシックバレエとモダンバレエの違い
規範や形式美を重んじるクラシックバレエに対して、新しくより自由なバレエは「モダンバレエ」と呼ばれます。
モダンバレエの誕生
モダンバレエには明確な定義はありませんが、20世紀初頭に芸術に革新をもたらしたバレエ団「バレエ・リュス」の振付家ミハイル・フォーキンから始まったとされています。
プティパの様式主義に反発したフォーキンは自由な表現を追及。
クラシックバレエで確立された技法にはない内股などの新しい動きを積極的に取り入れ、ダンスの表現力を大きく広げました。
クラシックとモダンの違い
クラシックバレエとモダンバレエはさまざまな面で大きな違いがあります。
まとめると、以下のような違いです。
クラシックバレエ | モダンバレエ | |
重視する点 | 厳格な規律の中での華やかな美しさ | 個性的で自由な表現の追求 |
振付 | 型が決まっている 伝統的に決まっている振付を踊る 脚は常に外に開く 回転や跳躍は必ず取り入れる | 型に囚われない 振付は振付家が決める 内股になる振付がある 回転や跳躍が無いこともある |
音楽 | 決まっている | 振付家が自由に決める |
物語性 | あり(劇的な展開) | なし(抽象的で独創的) |
感情表現 | 小さく幻想的 | 大きく官能的 |
衣装 | きらびやかな装飾が施されたチュチュ | レオタードやユニタードなど 装飾を取り除いたものが多い |
髪型 | シニョン | 自由 |
靴 | トゥシューズかバレエシューズ | 裸足、スニーカー、ヒールなど |
クラシックバレエは、規範を守った上で表現することが鉄則。感情に任せて動くことはできず、格調高く理想的なスタイル・正確で端正なテクニックを実現した上で、感情も表現することが求められます。
一方のモダンバレエはそのような縛りからは自由。あらゆる表現の可能性が開かれているのが特徴なのです。
まとめ
19世紀に確立したバレエの伝統を守るクラシックバレエ。
一方のモダンバレエは振付、音楽、衣装、演出などが作者の自由となっています。
日本でも子どもの習い事として人気のバレエですが、より人気が高いのはクラシックバレエの方です。
とはいえどちらが好みかはその人次第。
実際に両方を鑑賞し、比較してみると良いかもしれません。
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