どこよりも熱くお届けするスポーツコンテンツ

NEW POST

スポスルマガジンの最新記事

スポーツを探求する

サッカーの見方について・2【くぼっちコラム】

前回から始めた「サッカーの見方」シリーズ。前回は「派手なプレーと地味なプレー」をそれぞれ攻撃時と守備時に分けて考察しましたが、第二弾となる今回は「試合運び」について、掘り下げていきます。

サッカーは90分で行われるスポーツ。試合が始まってから終わるまでの長い長い90分をどう乗り切っていくか、どういうプランを持ちながらプレーをしていくかというのは、試合に臨むうえで決して外せないとても大切な要素です。

そのため、見る側もこの「試合運び」に目を向けてみると、これまでとは少し違った趣で見ることができるかもしれません。

【前回の記事はこちら】⇩
サッカーの見方について・1【くぼっちコラム】

ピッチには、見えるものと見えないものがある

ピッチ上で繰り広げられる両チームのプレーは、もちろん目で見ることができます。しかしその裏には、なぜ今そのプレーをしたのかという理由が必ずあります。

また、試合を見ているとき

「この時間帯、なぜこんなにゆっくりプレーしているんだろう」

「なぜ、あんまり攻めようとしていないのか」

「なぜこのチームは今、こんなに急いで攻めようとしているんだろう」

「なぜ、このチームはこんなに走れなくなってるんだろう」

というような視点で見られるようになると、そこからまた、サッカーを見る目が少し熟成されてくるかもしれませんね。

上記に挙げたような事象にも、必ず理由があります。そしてこれは、決して目には見えないものです。

目には見えない思惑であったり、そのチーム内でしか分からない共有の戦略かもしれません。

そのようなことを今回は「試合運び」と称し、話を進めていきます。

90分をどう使うのか

先ほども書いたように、サッカーは90分で行われるスポーツです。

90分という長い時間、初めから最後まで全てフルスロットルで走り続けることは不可能なので、フルスロットルでたたみかける時間帯もあれば、今は少しセーブしよう、とあえてゆっくり試合を進めたり。

このような意図した緩急の変化に気づけるようになると、楽しいかもしれませんね。

Aチームがボールを支配し続け、しかしなかなかゴールまでは至らない。でも、後半になるにつれてもう一方のBチームの足が止まり始め、前半からボールを支配し続け動かし続けていたAチームに、ようやくゴールが生まれた。

後半、Aチームにようやくゴールが生まれた要因は何でしょうか。そしてやっとこさ奪ったこのゴールは、きっとAチームの狙い通り、思惑通りだったはずです。なぜ、Bチームは足が止まってしまったのか。

僕はよくサッカーをボクシングに例えて選手に話すのですが、例えばボクシングでは、1ラウンドにダウンを奪い、続く2ラウンドにも強烈なストレートでダウンを奪ってそのままKO勝ちとなって試合を終わらせることもできます。

しかしサッカーでは、そうはいきません。いくら前半から何回ダウンを奪ったとしても、必ず最後の12ラウンド(90分)まで、フルで戦い続けなければいけない。

そうなると、1ラウンドから12ラウンドまで全てKOを狙って攻勢を仕掛けるのではなく、いかに12ラウンドをトータルで戦い抜くかという戦略のもとに、試合を進めていかなければなりません。その意味では、サッカーってなかなか難儀なスポーツです。

ボクシングに例える話、さらに進めていきますね。

ジャブとストレート

先ほどの「Aチーム 対 Bチーム」の試合。なぜ後半に奪ったAチームのゴールは思惑通りだったのか、そしてなぜ、Bチームは足が止まってしまったのか。

これも、ボクシングに例えるとよくわかります。Aチームは前半からボールを支配し続け、ボールを動かし続けました。前、後ろ、左右とボールを動かし、相手を引きつけてからパス、またボールを動かし、また相手を引きつけてからパス。

これは、ボクシングでいうところの「ジャブ」です。

ジャブでKOすることはほぼないけれど、前半から効果的にジャブを打ち込み、相手を消耗させる。

ボールを動かされ続け、振り回され続けたBチームは、このジャブにより大きく疲弊させられてしまったわけです。

最初からジャブを打ち続けたことが布石となって、相手を疲弊させ、後半のノックアウト(ゴール)へと繋がったということですね。まさにAチームの思惑通り。

「決して攻め急がず、ボールを動かし続けて相手を走らせ、疲れさせよう。ジャブを小気味よく打ちながら、ストレートを打ち込めるときを待つんだ。大差はいらない。1−0でいいぞ」と。

Aチームが仕掛けたこの「試合運び」がピタリと嵌った、会心のゲームと言えるでしょう。

最後に

いかがでしたでしょうか。ジャブを打ちながら相手にストレートを打ち込むタイミングを伺う戦略もあれば、逆に相手に打たせ、クロスカウンターを狙う方法もある。

格上な相手との試合ならば、ひたすら足を使ってフットワークでかわし続け、相手が打ってきてもすかさずクリンチで膠着状態に持ち込んで引き分けを狙う⋯などなど。

こうしてボクシングに例えると、サッカーの試合運びについて、いくらでもわかりやすく説明できるかと思います。

これらはあくまでも一つの見方に過ぎません。皆さんも、両チームがどんな試合運びをしようとしているのかを、ご自分なりの視点で楽しく見つけてみて下さい。

次回は「サッカーの見方について」シリーズの最終回です。お楽しみに!

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。



  • この記事を書いたライター
  • ライターの新着記事
くぼっち

くぼっち

見方と考え方が変われば違う景色が見える。違う自分になれる。現実の殻を破るのだ

20年以上サッカーのプロコーチをしてきましたが、サッカーよりも好きなものがたくさんありすぎて、その影響か、サッカーを別の角度から見たり、疑ったり、これまでの見方を変えてみるという悪癖があります。でもそうすると、これまでとは全く違う景色が見えたり、新たな興味も湧いてくるんですよね。理想が現実を塗り替えていく、そんな世の中にしたいです。

  1. サッカーにおける「攻撃」とは・1【くぼっちコラム】

  2. 指導者と選手の素敵な関係性【くぼっちコラム】

  3. 育成年代においての試合の「やり方」【くぼっちコラム】

PAGE TOP