日本発祥で、「お家芸」とも言われるスポーツが柔道。
しかし近年は海外で人気を集める一方、日本で競技人口が減少していると言われています。
では実際のところ、柔道の競技人口はどれくらいなのでしょうか。
そして競技人口が減っている理由は?
今回は、柔道の競技人口について調査しました。
【柔道】世界の競技人口
まずは世界の柔道人口から。
柔道を創設した嘉納治五郎氏は当初から柔道を世界に普及させることを念願としていました。
そのため柔道は世界中で競技者を増やし、今では約200カ国に愛好家がいると言われているのです。
その中から競技人口のトップ3は以下の国になります。
ドイツ
ドイツでの柔道の競技人口は約15万人。
特に7歳から14歳の競技人口が多いことが特徴で、それ以降になると競技人口は大きく下がります。
競技スポーツとして熱心に取り組む子どもが多く、その一部が生涯柔道を続けているようです。
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フランス
フランスの競技人口は約56万人。
ヨーロッパでも突出した人気を誇ります。
フランスに柔道を広めたのはフランス柔道の父と言われる川石酒造之助(かわいし・みきのすけ)氏と、その弟子のベルナール・パリゼ氏です。
川石氏は外国人に柔道を教える方法を工夫し、日仏柔道クラブを創立。
パリゼ氏は柔道の指導者育成に力を注ぎ、フランスでは1955年以降は柔道指導者になるための国家試験が実施されています。
そしてフランスでは、礼儀や規律を習得するために柔道を学ぶことが伝統に。
教育としての柔道がフランスでの人気を支えています。
ブラジル
ブラジルの競技人口はなんと200万人。
世界一の柔道人口を誇ります。
明治時代の後半に日本人移民が広めたのがブラジルの柔道の始まり。
今では多くの学校で教育の一環として柔道を取り入れています。
また少し大きな街には柔道教室があり、地方政府が補助金を出して柔道の学びの場を無料で提供していることも。
近年ではブラジルの柔道指導者がヨーロッパや北米のナショナルコーチとして赴任するまでになっています。
【柔道】日本の競技人口
フランスが約56万人、ブラジルが約200万人ですから、日本の柔道人口は最低でも数百万人と思った方も多いかもしれません。
しかし残念ながらそれは間違いです。
現在の日本の柔道人口は約12万人。
ブラジルの16分の1以下で、ドイツよりも少ないのです。
競技人口の推移
約12万人というのは、全日本柔道連盟の2021年の個人登録会員数。
競技人口にはさまざまな考え方があり、日本でも例えば体育の授業で柔道を習っている場合にはこの数に入らないなど、単純に海外と比較することができない面もあります。
しかし全日本柔道連盟の登録会員数だけを見ても、柔道人口の減少は深刻だといえるのです。
例えば、2006年の会員数は、約20万人。
これが2011年には約18万人となり、2016年には約16万人に。
毎年前年比2〜4%の割合で減少しているのです。
そして2021年には競技人口が大幅に減って約12万人に。
これは新型コロナウイルスの影響が大きいと言われています。
小・中・高校生の競技人口
特に深刻なのが将来を担う学生の競技人口の減少です。
小学生は、2004年には約4万8000人だった競技人口が2020年には約2万7000人に。
約44%減少しています。
中学生は、2004年には約4万8000人だった競技人口が2020年には約2万5000人に。
こちらは約49%の減少です。
高校生の場合、2004年には約3万8000人だった競技人口が2020年には約1万8000人に。
なんと約54%も減少しています。
この間の少子化による生徒全体の人口減少は小学生と中学生が約12%で、高校生は約17%。
確かに少子化は進んでいますが、柔道人口の減少率はその4倍前後にもなっているのです。
小学生の競技人口が減った理由
学生の競技人口は軒並み減っているように見えますが、中でも問題なのは小学生の人口減少です。
なぜなら小学生と中学生の競技人口にはあまり差がないから。つまり小学生で柔道に取り組んでいた子どもが中学生で辞めることは少ないのです。
そして小学生の人口減少の背景には、幼少期の大会の影響があると言われています。
柔道大会ははっきりと勝負が決まる場所です。
正しい技の習得ができていない幼い子どもが柔道大会に出るため、指導者は勝つための強引な技ばかりを教えることに。
その結果、勝負に負けた子どもが、「柔道は楽しくない」と、本来の柔道を全く知らないうちに辞めてしまっているというのです。
競技人口増加への取り組み
日本は柔道の競技人口を増やすことが急務。
特に小学生では、大会に勝つことだけではない柔道の楽しさを教えられる指導者の育成が必要だと言われています。
一方、中学以上では大会に出たくても出られないという問題も。
中学生の場合、学校単位では柔道部すらないところも多く、大会に出る機会も限られています。
そこで日本中学校体育連盟は2023年度から、学校だけでなく、民間のクラブや団体でも全国中学校体育大会に出場可能にすると発表。
部活動がない学校の生徒でも地域の道場に通えば大会出場ができるようになりました。
このように各方面が柔道の競技人口拡大に向けて動き始めています。
まとめ
世界的には非常に多くの競技者や愛好家がいる柔道。
しかし日本ではここ十数年間、競技人口の減少に歯止めがかからない状態が続いています。
このままでは日本のお家芸である柔道は衰退することに。
まずは勝ち負けだけではない柔道の楽しさ、そして海外では認められている礼儀作法の教育としての柔道の魅力をもっと広めていく必要があるかもしれません。
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