最近のサッカーボールは白を基調にカラフルな模様のものが主流。
しかし今でもサッカーボールといえば黒い五角形と白い六角形の組み合わせを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
基本が白黒の2色というのは、スポーツ用のボールとしてはかなり特殊。
なぜサッカーボールはこのような色になったのでしょう。
今回は、サッカーボールの色が白と黒になった意外な理由、そしてサッカーボールの進化の歴史をご紹介します。
【サッカーボール】白黒以前の歴史
サッカーが現在のようなスポーツになったのは、1863年。
ロンドンに英国サッカー協会が誕生し、サッカーのルールが整えられていきました。
この当時のサッカーボールは白黒だったのかというと、それは違います。
初期のボール
初期のボールは、動物の膀胱に革を縫いつけたものでした。そのため完全な球体には程遠いもの。
ここからの約100年間、ボールの色は革そのままの茶色、または単色で、球体に近づける努力が続きました。
紐付きボール
サッカーの第1回ワールドカップが開かれたのは1930年。
この時にはイギリス製の2つのボールが各ハーフで使われました。
1つはバレーボールによく似た12枚革の「12パネルボール」で、もう1つはアルファベットのT字を組み合わせた「Tモデルボール」。
どちらもラグビーボールのような紐が付いていました。
バルブ付きボール
1950年の第4回ワールドカップで、ボールに革命が起こります。
それは、初めてバルブから空気を入れるボールが採用されたこと。これによってサッカーボールから紐がなくなりました。
派手なカラーボール
1954年の第5回ワールドカップのボールは、細長い18枚のパネルで構成されたもの。鮮やかなイエローのカラーでした。
この大会から、ワールドカップのテレビ中継が始まります。
パネルの変化
1954年の細長い18枚のパネルの後も、サッカーボールはより球体に近づけるための進化を続けます。
1962年のワールドカップで使用されたのは、12個の六角形と6個の長方形のパネルで構成されたボール。これが1966年大会では25枚の細長いパネルになります。
そしていよいよ完全な球体に近いボールが登場することになるのです。
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【サッカーボール】白黒の時代
サッカーボールに大きな革命が起こったのは、1960年代のヨーロッパ。
ついに12個の五角形と20個の六角形で構成されたボールが登場したのです。
五角形と六角形の理由
12個の五角形と20個の六角形の組み合わせは、「切頂(せっちょう)20面体」といわれる立体。
この32面体は、古代ギリシアのアルキメデスが考えた「アルキメデスの立体」と呼ばれる13の立体のうちのひとつ。球体に最も近い立体として考案されたもので、「アルキメデスの32面体」と呼ばれています。
つまり古代ギリシア以来の理論を採用したのがあのサッカーボールなのです。
白黒になった理由
アルキメデスの32面体を利用したボールは、アディダスからの依頼で日本のモルテンが製作したもののがオリジナルです。「テルスター」と呼ばれたこのボールは、あのおなじみの五角形が黒、六角形が白という配色。
この白と黒の色になった理由は、当時の白黒テレビの普及によるものでした。
これ以前のボールは、白黒テレビで見るとフィールドの中に紛れてしまい、よく見えなかったのです。
それが大きな問題となり、対策として考案されたのが白と黒の2色を使うこと。サッカーのフィールドは白黒テレビではやや黒っぽく見えるため、白の比率を多くしてその中に黒を浮かび上がらせるデザインになりました。
白黒の進化
サッカーボールといえば白黒をイメージする人は多いのですが、その中でもある年代より若い世代は、五角形と六角形をそれぞれ塗ったものではなく、五角形の周囲を円で囲んだ模様を思い浮かべるかもしれません。
これは1978年のワールドカップでアディダスが発表したタンゴというモデル。ボールの動きまで計算して、よりクールに見えることを目的としたボールとなっています。この白黒模様は、1990年代の後半までアレンジを加えながら続いていきました。
【サッカーボール】カラーの時代
1990年代後半になるとボールにカラー化の波が押し寄せます。
その理由は、白黒テレビのときと同じものでした。
カラーになった理由
サッカーボールが白をベースに多くの色で構成されるようになった理由は、もちろんカラーテレビの普及です。
そして色付きのボールを一躍メジャーにしたのが、1998年のワールドカップフランス大会。
タンゴのデザインにフランスの国旗をイメージしたトリコロールカラーを取り入れ、サッカーボールのイメージを一新しました。
再びパネル進化の時代へ
1960年代に登場したアルキメデスの32面体は2000年代初頭まで約40年間もワールドカップの公式級に採用されました。
しかしその後、2006年のワールドカップに、14枚の曲面パネルを熱で接着する画期的なボールが登場。以降、8枚、6枚とさらにパネル数を減らしながら、ボールはより軽量で完璧な球体になっています。
しかし一方で、今でもアルキメデスの32面体を使ったボールは根強い人気。
あの白黒模様もまだまだ健在です。
まとめ
サッカーボールの決定版といえる五角形と六角形の白黒ボール。
その登場の裏には、白黒テレビでの中継がありました。
理由を考えれば、今でも白と黒のボールを使うのは実は不自然なことかもしれません。
しかし最もサッカーボールらしいあの白黒ボールは、ずっと残って欲しいものです。
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