世界的な大会で日本人が活躍し、注目を集めているスケートボード。その影響もあって、今各地に「スケートボードパーク」が増加しています。
スケートボードのトリックが楽しめるパークはどのようにして作られているのでしょうか?
ここではスケートボードパークを作るプロの仕事に迫ります。
スケートボードパーク増加の背景
スケートボードパークには、民間のものと公共のものがあります。最近は公共パークが増加中。その背景にはスケートボード人気の急拡大があります。
近くにスケートボードを安全に行える環境がない人々が署名運動を行い、一部の市町村がそれに対応。それが観光や街興しで大成功したことから、全国の公共事業として注目を集めるようになったのです。
スケートボードパークの種類
スケートボードパークは、平面にクオーターパイプなどのセクション(使用される道具の総称)を設置するタイプと、セクションも含めた全体をコンクリートで工事するタイプに分かれます。
設置するタイプで使うセクションの材質は主に以下の3つです。
・木材:初期費用は安く抑えられる代わりに傷みが早く、メンテナンスが重要になります。主に民間パークで利用されています。
・鉄骨:費用は比較的安く雨風にも強い代わりに、騒音や錆が弱点となります。そのため近年は減少しています。
・モジュラー式:耐水性の樹脂素材などを組み合わせたもの。雨風に強く騒音も少ないため、近年の主流となっています。
平面に配置していくモジュラー式や木材のセクションは、それを制作、販売している会社があります。様々な高さのフラットバンクやクオーターパイプ、ウエーブランプ、グラインドレールなどを販売。
短期の場合にはレンタルも行う他、販売後のメンテナンスも行います。そういった会社の多くは、パーク全体の配置の設計や施工も行います。
コンクリート式の施工
より高度な工事が行われるのが、全て一体となったコンクリート式。重機を駆使した大規模な工事となり、費用も上がります。その一方で滑走性は最高。費用はかかりますが、公共事業として近年人気を集めています。
こういった工事を行なっている会社にはいくつかの種類があります。
・造成・舗装や外構工事を行なっている一般的な土木会社の中にスケートボードパーク専門の部門がある。
・公園や体育施設専門の工事会社でスケートボードパークの建設施工も行う。
・スケートボードパーク専門会社として建設施工を行う。
いずれの場合も、そこで働く人は土木工事のプロであると同時にスケートボードにも精通している必要があります。
コンクリート式の施工の流れ
スケートボードは競技スタイルによってセクションの種類がある程度決まっていますが、セクションの大きさや形、設置数には統一規格がありません。また、標準的な形というものも存在しないため、施設のデザインはかなり自由に行うことができます。
モジュラー式などの場合は後で変更もできるのですが、コンクリートで工事した場合、変更は困難。そのため事前のプランニングがとても重要になります。
デザインの決定
スケートボードパークは複雑な3次元曲線の組み合わせになります。そのため、連なっているセクションの位置関係が悪いと走行リズムが妨げられることに。また、意図せずに危険な場所ができてしまう可能性もあります。
設計者は滑走、トリック・プレイの難易度を考慮しながら、3Dパースや、場合によっては小型の模型まで製作して、スケーターの感性で爽快感や安全性を検討します。
幅広いレベルで楽しめつつ、ある程度はチャレンジングなコースにするそのバランスが腕の見せ所となります。
造成
パークの規模や元々の土地の状態にもよりますが、大規模なものの場合、砂まじりの土を大量に敷き詰め、重機で大まかな形を削り出して作ります。
アールの形状などは木を組み合わせた型を当ててチェックしながら掘削。またEPSブロックと呼ばれる発泡スチロールをベースにすることもあります。
このEPSは盛り土の代わりに道路の下に敷き詰められることもあるほどの強度があります。
コンクリートの流し込み・吹き付け
出来上がった空間にコンクリートを入れます。とはいえ水平な面がほとんどなく、複雑な曲面でできているため、単純に流し込める場所はあまりありません。
特に難易度が高いのは、アールのついた急斜面。ここは特殊なポンプ車でコンクリートを吹き付けて施工します。吹き付け回数やコンクリートの配合も現場の状況に合わせて微妙に調整することが必要です。
撫で上げ作業
コンクリートが入った後の重要な工程が撫であげ作業。
表面の滑らかさは滑り心地や安全性に大きな影響を与えるため、スケートボードをよく知る職人さんが滑走面を手作業で徹底的に磨き、仕上げます。
まとめ
スケートボードパークの建設には決まった形がないため、設計者のスケーターとしての感覚が問われます。
様々なセクションを組み合わせた上で危険な箇所がないか、しっかり見分ける腕も必要。
施工する職人さんにも、実際に滑った感覚を想像する力が求められます。
それだけにスケートボードが好きな人にとってはとてもやりがいのある仕事になるのではないでしょうか。
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