選手に最も近い位置で試合を見守っている「セコンド」。選手にアドバイスをしていることからボクシングに精通しているらしいことは分かりますが、あの仕事には資格や試験はあるのでしょうか?
ここではプロボクシングのセコンドの仕事内容と、なる方法をご紹介します。
ボクシング|セコンドの仕事
大好きなボクシングの試合を近くで見られるから、などといった安易な気持ちではとても務まらないのがセコンドの仕事。
その人数はプロの場合、3人まで認められていますが、やるべきことはとても多く、しかもスピードが求められます。
選手の世話
選手はグローブをつけてしまうと、基本的に手で何も掴めなくなってしまいます。そのため、身の回りの世話をしてあげる必要があります。
テーピングを巻く、ガウンを脱がせる、ファールカップを取り付ける、ワセリンを塗るなどの地味なお世話はセコンドの仕事。
さらに選手の貴重品を預かるという仕事も。ここで混乱しては選手のやる気も失せてしまいますから、3人のセコンドが役割をしっかり把握しておく必要があります。
1分間の仕事
セコンドが最も忙しいのは、ラウンドの間の1分間。
ゴングが鳴ったらリング内に椅子を用意し、マウスピースを取り出し、ボクサーにうがいをさせて、マウスピースを洗浄して装着させ、グローブに付いたワセリンをタオルで拭き取り、ボクサーの汗も拭き取ります。
そして次のラウンドの10秒前に「セコンドアウト」の合図があったら、すぐに椅子やタオル、バケツ、ビンなどを片付けなければなりません。実はかなりの手際が求められるのです。
止血
選手が出血した場合、止血をするのもセコンドの仕事。止血する人のことをカットマンと言い、技術が評判になるとカットマン専門でセコンドの一員になることもあります。
カットマンはボクサーの傷の具合を一瞬で判断し、止血しますが、これはとても重要な仕事。うまく止血できず血が流れ続けるとレフェリーが危険と判断して試合をストップしてしまいます。出血の原因が偶然のバッティングではなく有効なパンチだった場合、TKO負けになってしまいますから、セコンドは1分間で必死に止血をします。
アドバイス
試合運びや作戦についてアドバイスするのはもちろん重要な仕事。
的確に行うためには選手の長所や短所、スタイルを熟知している必要があります。そのため、日頃から選手を鍛えているトレーナーがセコンドにつくことが多いのです。
さらにセコンドは、相手が次にどういう作戦でくるか予測する技術も求められます。それだけに深いボクシング知識が必須なのです。
そして3人のセコンドがバラバラなアドバイスをして選手を混乱させてしまうのは最悪。セコンドはラウンド中に試合を見ながらアドバイスの要点を打ち合わせしておく必要があります。
選手の安全を守る
最も重要なのは、選手を守ること。危険だと判断した場合、レフェリーストップを待たずにタオルを振って棄権させるのはセコンドの役割です。
これはウェイビングというルールで、以前あった「タオルを投げ入れる」行為からルール改正されたもの。タオルを投げた場合、ロープに引っかかるなどしてレフェリーが気付くのが遅れる可能性があるため、ぐるぐる振り回すようになりました。
それほど、棄権の判断は一瞬の差が大きな意味を持つということ。それだけにセコンドは日頃から選手をよく観察し、そのボクサーにとってどれほどのダメージが限界になるのかを見極める必要があります。
ボクシング|セコンドの禁止事項
映画などでは試合中にリングを叩き、大声で叫んでいるセコンドがいますが、あれは厳密にはルール違反。
セコンドは原則として試合中は静粛にしていることという決まりがあります。またラウンド中はリングの下接地面に着席し、リングマット、コーナーポスト等に手を触れてはならないというルールも。違反してレフェリーから退去させられると、ライセンス停止もありえます。
またプロボクシングの場合は最大3人のセコンドがいますが、リングに入れるのはそのうち1名と決まっています。
ボクシング|セコンド資格の取得方法
プロボクシングのセコンドになるためにはJCB(日本ボクシング連盟)の各地区事務所の理事長の承認を得てセコンドライセンスを取る必要があります。
一方で特に資格試験があるわけではなく、ジムの会長が申請すれば取得は可能。具体的には、プロが所属しJCBに加盟しているジムに所属し、その会長がライセンス申請してくれれば取得できます。
とはいえ、ジムの会長が素人をセコンドにしてくれることはまずありません。ジムに所属して練習を積み、会長の指導を受けながらトレーナーとして活動している人がセコンドの仕事に就くことがほとんどです。
37歳でプロボクサーのライセンスを自動失効し引退した選手がトレーナーに転身し、セコンドライセンスを取るというパターンもあります。
まとめ
プロボクシングのセコンドにとって重要なのは、ボクシングの深い知識と選手との信頼関係。
多くのセコンドはトレーナーとして普段から選手をコーチし、トレーニングや減量のサポート、心と体のケアも行っています。
そうした繋がりがあって初めてできる仕事なのです。
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