親方=後進の指導をする人というのは知っていても、それ以上の詳しいことはわからないし、そもそも親方ってどうやったらなれるの?と首を傾げている人も少なくないのではないでしょうか。
今回は、その親方という存在になるにはどうすればなれるのかについて、ご説明します。
相撲の親方って?
実は、親方と呼ばれているものと、年寄(としより)と言われているものはまったく同じものを指しています。一般の人には、年寄よりも親方という敬称の方が親しまれて使われているので、耳慣れた言葉になっているのでしょう。
年寄とは、公益財団法人日本相撲協会の構成役員のことを言い、引退した元力士達の多くが所属しています。詳しくは後述しますが、年寄になる条件には場所で何勝をあげたかや、どれくらいの階級であったかなどが大きく影響してくるため、そもそも力士になったことがない人間は年寄=親方になることはできないのです。
大相撲の運営は、原則としてこの年寄たちにゆだねられていると言っても過言ではありません。現役を引退した力士が協会の運営に関わったり、後進の指導をするためには年寄を襲名する必要があるのです。
なお、若者頭(わかいものがしら)、世話人などごく一部例外の方もいます。また、相撲部屋と個々に契約しているコーチやマネージャーは厳密では協会員ではないので、少しシステムは複雑です。
親方にとって最も大切な仕事は、自分が管理・運営する部屋に所属する力士に対する指導や監督と言われています。力士達の力量を鍛えるのみならず、集団生活や一般常識などを学ばせ、精神面の指導なども親方の責任だと言われているのです。
部屋の所属する力士が喧嘩をしたり、モラルがなっていない行動をして問題になると、親方が出てきて会見が行われるということがあるのはこのため。
親方という仕事は、その名の通り力士達の新しい親となって面倒を見ることでもあり、非常に責任重大なのです。
まずは力士になる条件!
かの白鵬関に関して有名なのが、彼が力士になるのに大変苦労したというエピソードではないでしょうか。彼は少年の頃に親の反対を受けながらも相撲がやりたいと来日したものの、当時15歳の白鵬は身長175センチ、体重は70キロ未満とかなりの細身。
当時の新弟子基準に体重が引っかかっていたこともあり(昔よりも、新弟子基準が厳しかったというのもあります)なかなか部屋入りを認められなかったといいます。そんな少年が今や相撲に詳しくない人でもその名を知る偉大な横綱となったのですから、どれほどの努力と才能であったのかは言うまでもないことでしょう。
そう、実は力士になるのには条件があるのです。
一つは年齢制限。一般人ならば23歳以下でなければならず、アマチュア相撲などで一定の成績を収めた人ならば25歳以下である必要があります。子供の頃から弟子入りして、というケースが多いのもこのため。
さらに身長も167cm以上、67kg以上でなければ新弟子検査でOKを出してもらえません(この基準は、白鵬の入門当初の基準よりもかなり緩和されてはいます)。
ただし例外として、三月場所の新弟子検査受検者で、中学卒業見込み者に限り、165cm以上65kg以上で合格となります。
無差別級のスポーツであることもあり、安全性も鑑みて、このような体格面の基準が設けられているのです。
関取になるのはこんなに大変!
力士になるだけでも大変なのに、関取になるのはさらに大変であるのは言うまでもないでしょう。そして、親方になる条件として関取になることは必須なのです。
それも、幕内力士としての勝ち星が条件に含まれているので、十両を超えて前頭以上にならなければいけません。大相撲の階級=番付は、上から順番に幕内(横綱、大関、関脇、小結、前頭)、十両。
関取に含まれない、力士養成員とされている五つの番付(幕下、三段目、序二段、序ノ口、番付外)があり、アマチュアなどで主だった功績がない力士は番付外からのスタートを余儀なくされます。
それぞれの場所で好成績を収めた上、条件が整わなければ上の番付に登ることはできません。(階級によっては、人数制限があるものもあるからです)
このことからもわかるように、関取になるということがどれほど険しい道のりであるかは、言うまでもないことでしょう。
そして、親方へ!
先述したように、親方になるためには関取、それも元幕内力士であることが必要です。そして、どのような親方になるかによって条件は変わってきますが、どんな親方になるにせよ、年寄を襲名するためには大前提として日本国籍を持っていなければいけません。
モンゴル人力士などが、日本国籍を取得するのはこのためなのです。
相撲部屋を新たに新設する親方になる場合の条件は以下の通り。
①横綱もしくは大関(大関から陥落した力士も含む)
②三役(関脇・小結)通算25場所以上
③幕内通算60場所以上(番付制限なし)
どこかの部屋に所属して弟子を育てる「部屋付き」の親方になる場合の条件は以下の通り。
①最高位が小結以上
②幕内通算20場所以上
③関取通算30場所以上
さらに、元からある部屋を継承して親方になる「部屋持ち」になる場合の条件は以下の通り。
①幕内通算12場所以上
②関取通算20場所以上
それぞれ、この二つか三つの条件を全てクリアしなければ、親方になることはできないのです。また、親方は定員105名という縛りがあるため、親方になりたくてもこの定員が満員の状態だと、新たに親方になることができません。
ただし「一代年寄」というものもあり、ある条件をクリアした元力士は、例外としてこの105名に含まれることなく年寄を襲名することができます。とはいえ、一代年寄の条件はなんと幕内優勝20回以上という凄まじいハードルの高さであるため、襲名を受けることができた者は歴代でも数えるほどしかいません。
それこそ、大鵬、北の湖、貴乃花といった、歴史に名を残すような偉大な力士達ばかりなのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。親方となるには、ある意味では横綱になる以上の長い道のりが必要となるようです。
ですが、多くの力士達が相撲を愛し、後世にこの素晴らしい伝統、技術を伝えていこうと努力を続けてきたからこその今の相撲業界があると言えます。
今後は相撲中継をただ熱狂して見るばかりではなく、このように脈々と受け継がれてきた相撲の歴史と、多くの力士たちの目に見えない努力に思いを馳せてみるのもいいかもしれません。
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