高校野球の延長戦でおなじみになったタイブレーク方式。近年は延長戦に入るとすぐにタイブレークが行われるようになりましたが、まだルールがよく分からないという方も多いのではないでしょうか。
ランナーは誰が出る?打順は?
今回は、ちょっとややこしい高校野球のタイブレークについて解説します。ルールが導入された経緯や、その後の変遷、徐々に見えてきた問題点についてもご紹介します。
【高校野球】タイブレーク方式とは?
そもそもタイブレークとはどういう意味なのでしょうか?
タイブレークといえばテニスが有名ですが、もともとはスポーツではなく議会用語なんです。
議会のタイブレーク
もともとの意味は、議会などで賛否が同数の場合、議長がどちらかに1票を投じること。これを議長決裁といい、「同数均衡 (=tie)」 を「破る (=break)」と表現したのが始まりです。
テニスのタイブレーク
テニスではゲームカウントが並ぶと2ゲーム差がつくまでゲームを続けます。
ところがテニスはサービス側が有利なため、長引いてしまいがち。そこで試合の決着を早くつけるために、ゲームカウントが6対6になったら7点先取のミニゲームを行います。それがタイブレーク。テニスではタイブレークはおなじみのルールでした。
ソフトボールのタイブレーク
そのタイブレークを野球よりずっと前に導入していたのがソフトボール。
ソフトボールは投手戦になることが多く、延々と0点が続きがちなため、試合の決着を早くつけるためにタイブレークが生まれました。
ISF(国際ソフトボール連盟)がこのルールを採用したのは1987年。当初は延長10回から採用されていましたが、2002年以降は延長に入ってすぐの8回から行われています。
【関連記事はこちら】⇩
・【高校野球】球数制限は何球まで?経緯や規定詳細を調査!
・【高校野球】甲子園大会の雨天中止はいつ発表?日程変更についても調査
【高校野球】タイブレーク方式のルール
野球では近年になってようやく導入されたタイブレーク。高校野球の場合、2014年から一部の春季大会の地区大会や都道府県大会、新チーム結成直後の新人戦で採用。2018年春からは甲子園の決勝戦以外の延長13回以降のタイブレークを採用しました。そして2021年春からは決勝戦でもタイブレーク方式が導入され、2023年の第95回選抜大会以降はタイブレークの開始イニングが延長10回に変更になっています。
では現在の高校野球の具体的なルールをご紹介しましょう。
開始イニング
野球の場合、タイブレーク開始イニングは大会ルールによってさまざま。前述のように高校野球では10回から行うことになりました。
ランナーの状態
タイブレークの最重要ポイントがランナー。どのような状態からスタートするかも大会規定によって異なります。
高校野球の場合は、ランナー1・2塁の状態からスタートします。
打順
ではランナーには誰が出るのかですが、その前に打順のルールが重要です。
野球では普通、前の回に最後のアウトになった打者の次の打者から始まります。しかしタイブレークには、そのまま続ける継続打順制の他に、実は選択打順制という制度もあります。
選択打順制は、前の回までの打順に関係なく、最初の攻撃をどの打者からでも開始できるというルール。これも大会規定によってどちらを採用するかが異なります。
とはいえ高校野球が採用しているのは継続打順。9回の攻撃が7番打者で終了したら、そのチームは8番打者から打席に入ります。
ランナーの打順
では塁に出る選手は誰かというと、その回の先頭打者の前の2人です。
つまり8番打者が最初の打者になるなら、ランナーは6番打者と7番打者。前の回の最後の2人の打者が入ります。
ランナーの順も打席順。8番打者から打つ場合、2塁ランナーが6番打者で、1塁ランナーは7番打者が入ります。
【関連記事はこちら】⇩
・【高校野球】ベンチ入り人数は20人?経緯や増加した背景を解説!
アウトカウント
もうひとつ重要なのがアウトカウント。
タイブレーク制では、ノーアウト、または1アウトから始まり、これも大会によって異なりますが、高校野球ではノーアウトからスタートとなります。
開始イニング
開始イニングは前述のように以前は延長13回からでしたが、2023年春の大会以降は延長10回からとなりました。つまり延長の初回からタイブレークということです。
試合終了と投球イニング数
以前、高校野球には延長は15回までというルールがありました。しかしタイブレークを行う代わりにこのルールは廃止。決着がつくまで試合は続くことになりました。
ただし1人の投手が1日に投げられるのは15イニングまでというルール。16回以降、先発投手は交代する必要があります。
【関連記事はこちら】⇩
・【高校野球】球数制限は何球まで?経緯や規定詳細を調査!
個人記録
タイブレーク後の個人記録はどうなるのでしょうか。
例えば投手の自責点ついては「出塁した2人の走者は、投手の自責点としない」と決められています。
そしてノーヒットノーラン(無安打無失点試合)は認められるのですが、タイブレークに入ったらパーフェクト(完全試合)は認められないというルール。これはちょっと残念ですね。
一方、打者の場合、自動出塁している2人の走者をからめた打点は、そのまま認められることになっています。
【高校野球】タイブレーク方式の問題
高校野球のタイブレークは、延長13回からの開始の場合、実施されたのは春夏合わせて4年間8大会でわずか6試合でした。ところが延長10回からになった2023年は、春と夏の2大会で9試合もタイブレークが行われました。ではタイブレークに何か問題はあるのでしょうか?
完全決着できていた可能性が高い
以前はタイブレークまで至ることが少なかっただけに、23年にタイブレークになった9試合の多くは、12回まで戦っていれば完全決着できた可能性が高いと言われています。
タイブレークは試合を早く終えるためのルールですが、本来の高校野球は不自然なランナーなしで決めるべきもの。完全決着できるならその方が良かったのではないかという意見が多いのです。
運の要素が大きい
タイブレークは実は運の要素が大きく関わることが問題になっています。
たとえば先攻後攻では、同点狙いか逆転を狙うかなどの作戦を立てやすい後攻の方が明らかに有利。2023年のタイブレーク9試合では先攻チームの2勝に対して後攻チームは7勝となっています。
また無条件にランナーがいる状態で打順がどうなるかも、運の要素が大きすぎると言われているのです。
まとめ
試合時間を短縮し、選手の安全を守るために導入されたタイブレーク。一度覚えて仕舞えばルールは単純です。
一方で運の要素が大きく、後味が悪いという声も。あなたはタイブレークについてどう思いますか?
【関連記事はこちら】⇩
・【高校野球】雨天コールドのルール一覧|これまでの経緯も詳しく解説
・【高校野球】球数制限は何球まで?経緯や規定詳細を調査!