近年、日本のプロ野球で絶滅寸前と言われているのがスイッチヒッターです。
スイッチヒッターは左右両打席で打つことができるバッターのこと。
日本では減っていますが、メジャーリーグでは今でも多くの選手がスイッチヒッターとして活躍しています。
今回は、スイッチヒッターを解説。
そのメリットやデメリット、過去の強打者や有名選手をご紹介します。
【スイッチヒッター】メリット
右打席でも左打席でも打てるスイッチヒッター。
なんとなく良いことが多そうですが、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
そしてデメリットはないのでしょうか。
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メリット① 対応の幅
左右打ちの最も大きなメリットは、対応できる投手が増えることです。
例えば右打者から見て右投手のボールは自分の体から遠ざかっていく軌道になります。
このためボールが見にくくなり、一般的に右打者は右投手が苦手と言われるのです。
これは左投手対左打者でも同じ。
しかしスイッチヒッターなら投手に合わせて得意な方の打席を選べ、さまざまな投手に対応できるのです。
メリット② 打席による得意技
スイッチヒッターには、場面によって長打力と俊足を使い分けて活かせるというメリットもあります。
本来が右利きのバッターの場合、右打席で長打力を発揮できますが、走塁は1塁により近い左打席の方が有利と言われています。
バットコントロールを生かして内野安打などを狙うのも左バッターの方が有利。
俊足巧打タイプの右バッターはスイッチヒッターになればその特性をより活かせるのです。
メリット③ 筋肉のバランス
もう一つのメリットは筋肉がアンバランスになりにくいということです。
バッティングは右半身と左半身がかなり偏った動作になるため、左右の筋肉バランスが悪くなります。
しかし左右打ちの練習をしていれば、このバランスを均等に保ちやすいのです。
近年はスイッチヒッターではないバッターも、筋肉バランスを整えるために逆の打席でバッティング練習をすることが増えています。
デメリット① 2倍の練習
最大のデメリットは練習量が増えること。
実際にスイッチヒッターに挑戦している選手は、右と左それぞれで他の選手と同じ量の練習を行わなければならないと言っています。
つまり単純に練習量が2倍になるということ。
しかも個人的に努力すれば良いだけではありません。
野球はチームプレー。打席やコーチの数にも限りがあるため、打撃練習の時間を1人で2人分使ってしまうわけにはいかないのです。
その結果、チームとの練習後に一人で練習をする時間が多くなってしまいます。
デメリット② 指導者の不在
日本でも過去には数人のスイッチヒッターが活躍したことがありますが、アメリカのようにスイッチヒッターの文化は根付いていません。
つまりスイッチヒッターを経験した人が少なく、左右打ち独特の技術の指導もできないということ。
そのため本来とは逆の打席は独学で練習するしかなく、試合で通用するレベルまで向上することが難しくなっています。
それを示すデータが、スイッチヒッターの左右での打率差。
スイッチヒッターは右バッターが左打ちも覚えることが多いのですが、アメリカでは一般的にバットコントロールと足を活かして左打席の打率が高くなります。
しかしスイッチヒッターの練習方法が確立していない日本では、左打席の打率の方が低いことが一般的。
そのため日本のスイッチヒッターは「作った左」と呼ばれることもあります。
指導者の不在はスイッチヒッターを目指す上で大きなデメリットとなっているのです。
【スイッチヒッター】強打者と有名選手
スイッチヒッターは、1871年に最初のプロ野球リーグ「全米プロ野球選手協会」が発足した当時にはすでに存在していました。
その後、左投手には右打者、右投手には左打者で打線を組むようになると、交代させられないようにとアメリカではスイッチヒッターを目指す選手が続出。
ではアメリカと日本には過去にどのような名選手がいたのでしょうか。
ミッキー・マントル
1969年に引退するまでヤンキース一筋で活躍したミッキー・マントルはスイッチヒッターとしては最多の536本塁打を放った選手。
しかも左右でほぼ同じ打撃成績を残し、「史上最高のスイッチヒッター」と言われています。
MVPを3度受賞、56年にはスイッチヒッター史上初の3冠王に輝き、オールスターには20回選出、ワールドシリーズ制覇7度というまさにレジェンド。
2022年には彼のトレーディングカードが、スポーツ関連のオークション史上最高額となる1260万ドル(約17億円)で落札され、話題になりました。
チッパー・ジョンズ
1990年代から2000年代のブレーブス黄金期を支えたチッパー・ジョーンズも、史上最高のスイッチヒッターの1人と呼ばれた選手。
日本の野球ファンには、1995年の新人王投票で野茂英雄氏に次いで2位だったことでも知られています。
通算本塁打は468本、打率.303という成績で、スイッチヒッターとして400本以上のホームランと3割以上の打率を残したのは彼のみ。
首位打者1回、シーズンMVPも1回受賞しています。
柴田勲
日本のスイッチヒッターの草分けが柴田勲氏。
1962年に投手として巨人に入団した柴田氏は、川上哲治監督の意向で日本初の本格スイッチヒッターに転身。
巨人V9時代のリードオフマンとして活躍しました。
「赤い手袋の盗塁王」としても知られる彼は、2000本安打も達成しています。
松井稼頭央
近年のスイッチヒッターとして特に有名な松井稼頭央氏も、高校時代は投手として活躍した選手。ドラフト3位で西武ライオンズに入団後に強肩・俊足が評価されてスイッチヒッターの内野手に転向しました。
本来右打ちだった彼は左打ちを覚えるために箸を左手で持つなど多くの工夫をして練習。
その甲斐もあって2002年にはスイッチヒッター史上初のトリプルスリー(3割、30本塁打、30盗塁)を記録しました。
さらに2004年からはMLBで活躍し、最終的に日米通算2705安打で名球会入りを果たしています。
まとめ
日本初の本格スイッチヒッターである柴田氏は川上監督にどのように打てばいいのかを訊いたとき「左でも右でも、両方打ちゃあいいんだ」と言われたそう。
スイッチヒッターという文化がアメリカほど根付いていない日本では、技術を習得することが難しく、高校野球でも左右どちらかの打席に専念するよう指導するのが一般的です。
でももしあなたが無類の努力家なら、スイッチヒッターになれるかも。
そうすれば珍しいタイプの打者として成功できるかもしれません。
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