あらゆるスポーツの中でも、長い歴史と伝統を誇るのがボクシングです。
以前から現代にかけて、日本人の世界チャンピオンが多数おり、世界戦のTV放送機会も多く、日本の皆さんにとって馴染みのあるボクシング。
しかし、そのボクシングの名前や由来については知らないという人も多いのではないでしょうか?
今回の記事ではその名前の由来と、長い歴史の変遷(へんせん)について解説します。
ボクシングの由来は?
そもそもボクシングはいつ頃から始まり、その由来を経て長い歴史を辿ってきたのでしょうか?
ボクシングの起源
二人の対戦相手が、四角いリングの中で両腕を駆使して打撃し合うボクシングですが、その起源は人類誕生にまで遡(さかのぼ)ります。
米国のボクシング研究家によれば、神話に登場するアダムとイブの子供達が兄弟喧嘩(けんか)をしたのがその最初だとしています。
これは神話の世界ですが、現実世界の話でいえば、1万年ほど前にエチオピアで行われていた兵士の訓練が原型となり、その後ボクシングの形となってエジプトからクレタ、そしてギリシアへと伝わって隆盛したとする説が有力とされています。
その根拠として、紀元前4000年頃におけるエジプトの象形文字に、当時のエジプト軍隊が格闘技としてボクシングを採用していた様子が示されており、またクレタ島で発見された紀元前3000年頃のエーゲ文明の遺跡からは、ボクシングの図が描かれた壷が発見されていることが挙げられます。
こうした起源と原型を経て、現代ボクシングの形に近づいた形で表現されたのは、ホメロスの「イリアッド」に記載されている、紀元前1100年頃のエピウスとエウリアレスの闘いの描写です。
その中で、この試合をプロモートした英雄・アキレスによる試合描写が表現されており、アキレスはKO勝ちしたエピウスにバラの花を、一方敗者エウリアレスには酒杯を贈ったと記述されています。
ボクシングという名前の由来
ここからは、そんな歴史を辿ってきたボクシングという名前の由来について解説します。
「ボクシング」という言葉の語源は、古代ギリシアにおける”PUXOS”(箱)を表わすものとされ、さらにPUXOSは”PUGME”(握りしめた拳)に由来しているとも言われています。
また、両手の拳(こぶし)を使って戦うという意味を持つラテン語”PUGILATUS“から、”PUGILISM“(ピュージリズム=競技ボクシング)という言葉が誕生しました。
競技ボクシングの黎明期と発展
競技ボクシングは、紀元前688年に開催された第23回古代オリンピック大会から正式種目として採用され、初代金メダリストにはオノマストス選手が輝いています。
この当時は、打撃する両手を保護するために、牛革製の柔らかくて長い革ひもを肘(ひじ)から拳にかけて巻きつけたり、鉄製の金具を取りつけた長い革ひもで両拳を固めて戦ったと言われています。
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ボクシングの凶暴化と禁止
その後、ボクシングは攻撃のバラエティなどを拡大しながら発展を続けましたが、徐々に凶暴化し、古代オリンピックの第38回大会以降は、噛みつきを除いたあらゆる攻撃が許され、ボクシングというよりは、むしろケンカ・ファイトへと過激化していきました。
さらに、ギリシアを征服して世界制覇を果たしたローマの時代には凶暴化が一層進み、金具などを前腕部に取りつけて戦うようになりました。
こうした状況は、その後ローマの衰退とキリスト教の普及とともに姿を消しました。
紀元400年頃になるとボクシング競技は禁止され、それ以後はなんと1200年もの長期にわたって表舞台から姿を消すこととなりました。
ボクシングの復活と変遷
1200年もの沈黙を経て、ボクシングが復活したのは16世紀、英国で行われた試合が契機となります。
1681年に、肉切り職人(ブッチャー)と従僕(フットマン)によって行われた試合です。
その後、ボクシングはイギリス大衆の間で人気を集めることとなりますが、当時はまだボクシングという呼称は一般的でなく、ベアナックル(素手)ファイトやミルという名前で行われていました。
また、現在のようにラウンド制ではなく、相手がダウンしたり、投げ倒されたりした場合に30秒の休みの後に再開し、応じられなければ敗北を宣言されるルールでした。
しかし一方、素手に近い形で行う残虐性を完全に払拭(ふっしょく)することはできず、1754年にはまた非合法とされ、その後ボクシングの試合を合法とするフランスやベルギーで行われることようになりました。
ボクシングの近代化と正常化
その後、紆余曲折(うよきょくせつ)を経て、ボクシングは近代化と正常化への道を歩みはじめました。
1867年に「クインズベリー・ルール」(全12条)が制定され、3分戦って1分休み、ダウンした後10カウントでKO、グローブを着用という、現代ボクシングにつながる画期的な転換を果たしたのです。
これ以降、多くの選手は品行方正でスマートなボクシングスタイルを定着させ、ボクシングの近代化は急速に進み、大衆スポーツとしての地位を確立していくこととなりました。
日本におけるボクシングの歴史
長い歴史と変遷を辿り、現在世界中で広く行われているボクシングですが、日本におけるボクシングの歴史はどうなのでしょうか?
日本でのボクシングの始まりは、渡辺勇次郎氏が東京・下目黒に日本最初の本格的なボクシングジムを設立した1921年12月25日とするのが定説となっています。
渡辺勇次郎氏は19歳の時に渡米し、サンフランシスコでボクシングを修行しました。
その後14年の長きにわたってプロボクサーとして活躍し、日本でジムを設立したもので、日本ボクシング界の始祖・あるいは父と呼ばれています。
その後、日本でもボクシング人気は徐々に高まっていき、それに伴って数々の名選手が活躍しました。
そして、1952年5月19日に後楽園球場で4万人の大観衆を集めて行われた世界フライ級タイトルマッチで、白井義男が日本初の世界チャンピオンとなったのは有名です。
そして、その後も数々の世界チャンピオンを輩出し、一定の人気を保っています。
まとめ
長い歴史と伝統を誇るボクシングの由来と歴史、変遷について解説しました。
日本でも数々の名選手を輩出しており、今後も正しくクリーンな運営によって、ボクシングがますます隆盛することを期待したいものです。
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