サッカー界で近年話題のVAR。
これはビデオ・アシスタント・レフェリーの略で、2018年のワールドカップで初めて見たという方も多いはずです。
Jリーグでも導入されたこのVARとは何で、どのような条件で使われるものなのでしょうか。
今回は、VARのルールや使用する条件、実際に使用する際の流れなどをご紹介します。
【VAR】ビデオ・アシスタント・レフェリーとは
VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)は、別の場所で映像を見ながらフィールドの審判員をサポートする審判員のこと。
またこのシステム全体をVARと称することもあります。
このシステムを使えるのは、国際サッカー評議会(IFAB)の承認を受けた組織やスタジアム、審判員のみ。
さらに少なくとも6カ月間の必修訓練を受けたトップリーグの主審または元・主審が務めると決められています。
VARの理念
VARについて勘違いされがちなのは、導入すればすべてのプレーが正確に判定されるのではないかということ。
しかしそれは間違いで、実はVARはすべてのプレーに介入するわけではなないのです。
VARの理念は「最小限の干渉で最大の利益を得る」こと。
判定を下すのはフィールドの審判員で、VARはあくまでもサポートに徹すると決められています。
そしてVARは、最良の判定を見つけようとするのではなく、「はっきりとした明白な間違い」をなくすことを目的としたシステム。
VARを担当する審判員は「その判定が正しかったのか?」を追求するのではなく、「その判定ははっきりとした明白な間違いであったのか?」という観点で判定を下します。
つまり微妙な判定はスルーするということ。ほとんど全ての人が「明らかに間違っている」と思うような判定以外は、VARが介入することはないのです。
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【VAR】ルールと条件
VARは「はっきりとした明白な間違い」と「見逃された重大な事象」の場合のみ、主審を援助すると決められています。
そしてその具体的な対象も明確に決まっているのです。
VARが介入する4つの事象
VARが介入するのは、次の4つのパターンです。
①得点か、得点ではないか?
②PKか、PKではないか?
③退場か、退場ではないか?(2枚目のイエローカードは対象外)
④警告退場の人間間違い
「見逃された重大な事象」とは
「見逃された重大な事象」とは、フィールド上にいる審判員からは見えないところで発生した重大な反則などのこと。
例えばペナルティエリア内で守備側選手がハンドの反則をしたが位置関係で審判員からは全く見えなかった場合、またはプレーとは関係ないところで選手が別の選手を殴っていたが審判員は見ていなかった場合などにVARが介入します。
【VAR】試合での流れ
では実際の試合の中でVARはどのように介入するのでしょうか。
例えばゴールに絡むプレーでその直前にハンドに見えるプレーがあったことをVARが発見、しかしフィールドの審判員が気づいていなかったような場合。
以下のような流れでVARが介入します。
チェックの伝達
まずVARは対象となるプレーのチェック(映像の確認作業)をしたいのでプレーの再開を遅らせるよう、主審に伝えます。
イヤフォンやヘッドセットでその連絡を受けた主審は、耳に手を当てながらもう一方の手を伸ばすシグナルを提示。
このシグナルでVARまたは他の審判員からの情報を受け取っていることを知らせます。
チェックの完了
チェックの結果「はっきりした明白な間違いはない」と判断すれば、VARは主審にチェックが完了し、問題がなかったことを伝えます。
一方、VARが「はっきりした明白な間違いがある」と判断したら、主審にレビュー(映像を見る作業)することを提案。
主審はレビューをするかどうかを自ら判断します。
オンフィールドレビュー
レビューをすると決めたら、主審は指で四角を描く「TVシグナル」を提示。
VARはリプレー映像に何が写っているかを主審に説明し、主審はタッチライン側のレフェリーレビューエリアでリプレー映像を見ます。
日本では主審がオンフィールドレビューを行うとき、スタジアムのビジョンにも同じ映像が公開されるのが一般的。
観客や選手、ベンチスタッフなども確認できるようになっています。
判定
主審はVARから提示された映像を確認後、TVシグナルを提示し、その直後に判定を提示します。
最終的な判定をするのはあくまでも主審。
映像を見ても判定を覆さないこともあります。
選手や監督が要請できる?
VAR介入の流れを読んで、「じゃあ選手や監督が明らかな判定ミスだと思ったらレビューの要求ができないの?」と感じた方もいるのではないでしょうか。
実はこれに関してはVARはチャレンジ制ではないという明確な決まりがあり、ビデオ判定を求めることはできないのです。
VARの判定はあくまでもフィールド上の審判員を補助するもの。
国際サッカー評議会が定めるVARハンドブックには、「選手がレビュー・シグナルを行った(レビューを要求した)場合、イエローカードが提示される」と規定されています。
まとめ
VAR導入後の統計によると、VAR判定の対象となる4つの場面で、判定の精度は93%から99%以上に向上しているそう。
またVARによって試合が長時間止まるという批判もありますが、ビデオ判定が行われる平均回数は1試合あたり5回以下で、試合が止まった時間は合計90秒以下だったことも分かっています。
まさに「最小限の干渉で最大の利益を得る」というVARの理念が実現できているといえるかもしれません。
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