サッカーのようでもあり、バスケットボールのようでもあるスポーツ、ハンドボール。
このスポーツはいったいどこで、どのようにして誕生したのでしょうか。
調べてみるとそのルーツには実に多くの説がありますが、直接的には2つの国が発祥の地として浮上してきます。
今回は、ハンドボールの歴史をご紹介。
今とはかなり違うスポーツになる可能性もあったその変遷を解説します。
【ハンドボール】歴史 古代のハンドボール
スポーツの起源を探るとき、どこまでをそのルーツと認めるかによって意見が大きく分かれます。
ハンドボールの場合は、手でボールを投げる競技であるところがポイント。
その意味では多くの球技が起源として挙げられます。
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古代エジプト
はるか昔から人間はボールを使って遊んでいました。
最も古い証拠は約4000年前のエジプトの壁画。そこに手を使った球技の様子が描かれています。
このため古代エジプトがハンドボールのルーツだという説も。ただしこれは手で行う球技という、かなり拡大解釈した起源だといえます。
古代ローマ
さらに有力な説は、紀元前1世紀~紀元後5世紀頃のローマで行なわれたパルパスツムという球技がルーツだというものです。
パルパスツムはローマ人がグレートブリテン島を支配していたときに軍事訓練用に考案したと言われる球技。
ラインでコートの範囲を区切り、相手チームの後方にあるラインの向こうまでボールを運べば点数が入るというスポーツでした。
ぶつかり合って相手からボールを奪い、しっかり持って運ぶという意味ではラグビーに近く、またサッカーの起源であるとも言われています。
【ハンドボール】歴史 近代のハンドボール
古代のハンドボールは広い意味ではルーツと言えるかもしれませんが、より現在のハンドボールに近いスポーツとしては、スウェーデンのハンドボル、チェコスロバキア(現在のチェコとスロバキア)のハゼナなどがありました。
しかしその後、はっきりハンドボールと言えるスポーツが、2つの国で誕生します。
デンマーク式ハンドボール
デンマークでハンドボールを考案したのは、イギリスに留学してサッカーを学んだラスムス・ニコライ・エアンストという人物。
彼は帰国後に教育実習生として生徒にサッカーを教えたのですが、寒冷地であるために屋内で行ったところ、生徒が校舎の窓を割ってしまいました。
そのため校長はサッカー禁止令を発令。エアンストは「手でボールを扱えばガラスを割ることもないだろう」と考え、ハンドボールを考案しました。
ハンドボールの初めての試合が行われたのは1897年。
その後、学校の体育の授業でも行われるようになり、1906年には最初のルールブックである「ハンドボール競技規則」が刊行されました。
このルールブックでは1チームは7人と定められています。
ドイツ式ハンドボール
ドイツでは、手を使って行う球技がラフ・バルというラグビーに似たスポーツとなり、19世紀末頃に広まりました。
そして1915年にはベルリンの女性団体が女性でも楽しめるラフ・バルとしてトーア・バルを考案。
1919年にベルリンの体育教師カール・シュレンツ氏がラフ・バルとトーア・バルの競技規則を整理し、11人制ハンドボールを考案しました。
その後ドイツでは1920年にルールブックを発行。翌1921年には早くもハンドボールの全国大会を開催しています。
さらに国際アマチュア・ハンドボール連盟(IAHF)がドイツの呼びかけで誕生。
1936年のベルリン・オリンピックでは、男子の11人制ハンドボールが競技種目として採用されました。
11人制の終焉
1938年にはIAHF主催の「第1回世界選手権」をドイツで開催。
当初は男子競技のみが11人制で行われ、のちには7人制が平行して行われるようになりました。
ところが1940年以降のオリンピックではハンドボールは競技種目から外されます。
大きな理由となったのが、7人制と11人制の不統一。
しかしその状況は1945年に大きく変わります。第2次世界大戦のドイツ敗戦でベルリンに本部があったIAHFは機能しなくなり、新しいハンドボールの国際組織が必要になったのです。
1946年、デンマーク、フィンランド、フランス、ノルウェー、オランダ、ポーランド、スウェーデン、スイスの8ヵ国の代表が協議し、「国際ハンドボール連盟(IHF)」が誕生。
デンマークが中心になったことで7人制が勢いを盛り返しました。
当初こそ世界選手権は11人制で行われましたが、すぐに7人制のハンドボールを選ぶチームが増加。
1962年 には世界選手権の女子大会が、続いて1967年には世界選手権の男子大会が7人制に一本化されました。
7人制の隆盛
7人制に統一されたことでオリンピックのハンドボールが復活。
1972年のミュンヘン・オリンピックで男子が、1976年のモントリオール・オリンピックで女子が競技種目になりました。
オリンピック復活をきっかけにIHFの加盟国も増加。開催年の1976年には66ヵ国が加盟しました。
さらに1990年代になるとハンドボールは人気スポーツとしてスポンサーが増え、さまざまな世界選手権が開催されるようになります。
その結果、ハンドボールはより広く普及。2022 年には209の国と地域がIHFに加盟するまでになっています。
まとめ
デンマークとドイツで誕生したハンドボール。
戦争がなければ今もハンドボールは7人制と11人制が混在する状態だった可能性もあります。または両方を統一した新しいハンドボールが誕生していたかも。どうなっていたか、今となっては誰にも分かりません。
歴史に翻弄されたスポーツともいえるハンドボール。
消滅した11人制のルールについてより深く調査してみるのも面白いかもしれません。
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