パラリンピックの熱い戦いは、世界に大きな感動を与えてくれます。そんな選手たちに対して下世話な話ですが、メダルを取ったら賞金は出るのでしょうか?またオリンピックでも話題になっている報奨金は出るのでしょうか?
今回は、パラリンピックの賞金と報奨金の話題を中心に、パラスポーツにまつわるお金事情をご紹介。賞金や報奨金に税金はかかる?遠征費用は誰が出す?などの疑問にも答えます。
【パラリンピック】賞金は出るの?
まずは最初の疑問。パラリンピックに賞金は出るのでしょうか?
話題になったワールドアスレティックスの発表
オリンピックの場合、2024年のパリ大会で賞金が大きな話題になったことを覚えている人も多いのではないでしょうか。
2024年4月10日、ワールドアスレティックス(世界陸連)が史上初めてオリンピックに対して「賞金を出す」と発表したのです。
リレーを含む48種目の優勝者とチームに贈られる賞金額は5万ドル(約750万円)。賞金総額は240万ドル(約3億6000万円)。今回は金メダリストだけが対象ですが、4年後のロサンゼルス大会では陸上競技の全メダリストが対象になると発表されました。
オリンピック・パラリンピックに賞金はない
なぜワールドアスレティックスの発表が大きな話題になったのかというと、国際的な競技連盟から出る初めての賞金だったから。
オリンピックでは3位以内の選手やチームにメダルが授与されますが、国際オリンピック委員会(IOC)から送られる賞金は一切なく、各国際競技団体からの賞金もなかったのです。オリンピック憲章に賞金を禁じる規定はありませんが、これまでずっとアマチュアリズムの精神を守るという暗黙の了解の上で、賞金は出されませんでした。
パラリンピックでもこれは同じで、メダリストに贈られる賞金は一切ありません。
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【パラリンピック】報奨金は出るの?
賞金のないオリンピックで話題になるのが、報奨金。パラリンピックにも報奨金は出るのでしょうか?
パラリンピックの報奨金
結論からいえば、報奨金は出ます。パラリンピックの報奨金を出しているのは、日本パラスポーツ協会(JPSA) 。その額は以下のように定められています。
・金メダル:300万円
・銀メダル:200万円
・銅メダル:100万円
この額は多いのでしょうか?それとも少ないのでしょうか?
オリンピックの報奨金
オリンピックの報奨金は大会ごとに発表され、パリ大会では前回の東京大会と同額になりました。オリンピックの報奨金は、日本オリンピック委員会(JOC)から支給され、その額は以下のようになっています。
・金メダル:500万円
・銀メダル:200万円
・銅メダル:100万円
銀メダルと銅メダルは同額ですが、金メダルはオリンピックの方が200万円も高額になっています。
そしてオリンピックの場合、JOCからの報奨金以上に各競技団体やスポンサーからの報奨金が大きくなっています。
例えば東京オリンピックでは、日本卓球協会からシングルスの金には1000万円、ダブルスの金には1人500万円。東京オリンピックで銀メダルを獲得した女子日本代表には日本バスケットボール協会から特別報奨金として1人当たり500万円が贈られました。
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日本パラスポーツ協会は赤字
これに対してパラリンピックはどうなのでしょうか?
日本パラスポーツ協会は報奨金に関して、「オリンピックと同額にしたい」と発表しています。
しかし日本パラスポーツ協会の2024年度の予算は約5億6000万円の赤字。パリ・パラリンピックの選手強化費などの支出もまかなえない状態なのです。
解決の方法は、協賛企業が増えること。パラリンピックへの注目が高まればスポンサーが増え、報奨金も増額すると期待されています。
各競技団体も資金難
ではそれぞれの競技団体の資金状況はどうなのでしょうか?
障害者スポーツをサポートする団体がまとめたデータによると、パラリンピック種目の競技団体のうち、約半分は自己財源が300万円未満でした。しかも国から助成される強化費は、オリンピック種目の団体の5分の1程度。資金不足は深刻で、とても高額な報奨金を出せる状況ではないところがほとんどです。
報奨金に税金はかかる?
国の助成金も少ないパラスポーツ。選手に送られた報奨金に税金はかかるのでしょうか?
結論を言えば、報奨金は非課税です。しかしここにもオリンピックとの差はありました。
一般的に、賞金などは「一時所得」に分類されて課税対象となります。
しかしJOCとJPSAから贈られる報奨金に関しては、非課税所得に該当することが明記されているのです。
ただし、もともと報奨金は課税対象でした。これが注目されたきっかけは、平成4年のバルセロナオリンピックで金メダルを獲得した当時中学2年生の岩崎恭子選手に贈られた報奨金。これが一時所得に当たるとして課税され、中学生から税金を取るのかと話題になったのです。
そして平成6年の税制改正でJOCからオリンピックメダリストに支給される報奨金は非課税とすることが設けられました。
パラリンピックにこの法律が適用されたのはずっと後の平成21年度。同時にJOC加盟の各競技団体からの報奨金も一定額までは非課税となりました。
パラリンピックの各競技団体からの報奨金も非課税になったのは、さらに後の令和2年度。
税金の面でもパラリンピックは制度の改正が遅れていたのです。
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【パラリンピック】選手たちの経済状態
賞金はなく、報奨金もあまり高額ではないパラリンピック。選手たちはどのようにして競技を続けているのでしょうか?
企業との契約が命綱
パラリンピックの選手にとって大きな負担となるのが国際大会参加のための遠征費です。パラリンピックに出場するレベルの選手のうち約7割には支援する企業がついていて、遠征費用やトレーニング費用の補助をしてくれます。しかしそれでも遠征費が全額まかなえないことも多く、平均すると年間に150万円近くが自己負担となっています。
まとめ
オリンピックと同じように賞金はなく、報奨金だけが出るパラリンピック。その額もオリンピックと同じレベルを目指していますが、日本パラスポーツ協会や各パラスポーツの団体は資金難に苦しんでいます。
解決するには企業の協賛が不可欠。その近道はパラスポーツへの関心が高まることです。
一度見ればその面白さにも気づくことが多いパラスポーツ。ぜひ応援しましょう!
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