テニスやゴルフに4大大会があるように、将棋の世界にも8大タイトルが存在します。
そしてタイトルを獲得すると、プロ棋士の名前の後ろにはタイトル名が付くことになります。
ではタイトルを複数取ったら、名前はどうなるのでしょうか?
今回は、将棋の8大タイトルについて解説。
序列や永世称号を名乗れるようになる条件についてもご紹介します。
【将棋】8大タイトルとは
そもそも8大タイトルとは、何の中の8大なのでしょうか。
答えは、将棋のプロ棋士が参加する大会「棋戦(きせん)」です。
棋戦には、全棋士参加棋戦や上位棋士選抜棋戦、若手棋士・低段棋士・下位棋士選抜棋戦、さらに非公式戦があり、その上位として優勝者にタイトル(称号)が与えられる8つのタイトル戦があるのです。
序列
8大タイトル戦は同列ではなく、序列があります。
この序列は、賞金や対局料など、日本将棋連盟に支払われる「契約金」によって決められています。
その序列は、以下の順です。
① 竜王(りゅうおう)
② 名人(めいじん)
③ 王位(おうい)
④ 王座(おうざ)
⑤ 棋王(きおう)
⑥ 叡王(えいおう)
⑦ 王将(おうしょう)
⑧ 棋聖(きせい)
賞金や対局料が公表されているのは最も序列が高い「竜王」のみですが、その優勝賞金は4400万円とされています。
契約金によって竜王の序列が最も高くなっていますが、一方でプロ棋士の中には「歴史ある名人戦は特別」という意識もあるそうです。
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称号の仕組み
では複数のタイトルを保持している棋士の称号はどのようになるのでしょうか。
実は棋士の呼び方には明確な優先順位があり、それによって決まるのです。
それは以下の順になります。
①竜王と名人
②竜王と名人以外のタイトル(序列順)
③永世称号
④段位
まず竜王と名人は別格。
多くのタイトルを保持して5冠などになっていても、竜王か名人を持っていたら、優先して〇〇竜王や〇〇名人と呼び、〇〇5冠とは呼びません。
竜王と名人の両方を持っている場合は、〇〇竜王・名人と並べて呼ぶことになります。
そして他のタイトルを複数持っている場合は、〇〇2冠、〇〇3冠と呼ぶことに。
〇〇王位・叡王・棋聖などと称号を並べて呼ぶこともできますが、その場合は序列順に呼ぶことになります。
ただしあるタイトルの防衛戦を行なっている期間や、そのタイトルについて取材を受けるときに限っては、タイトルの称号で呼ぶことになります。
例えば竜王と棋聖を持っている棋士が棋聖のタイトル戦を行うときは〇〇棋聖と呼ぶのです。
永世称号
永世称号はいわゆる殿堂入りのようなもの。
タイトルごとに定められたタイトル保持回数などを重ねることで得られるもので、獲得すると引退後に「〇〇永世竜王」などの称号で名乗ることができるようになります。
【将棋】8大タイトルの内容と永世称号
ではそれぞれのタイトルの特徴と永世称号を得られる条件はどのようになっているのでしょうか。
いずれのタイトル戦も挑戦権を得るための予選があり、本戦でタイトル保持者と対戦。勝者が1年間、タイトルを保持できます。
特徴があるのは予選。
タイトル戦ごとにさまざまな形式で予選を行います。
竜王
竜王戦の主催は読売新聞社。
まずはランキング戦と呼ばれるクラス別トーナメントを行い、各クラスの成績優秀者11名で挑戦者決定トーナメントを行った上で、優勝者がその年の挑戦者となります。
このトーナメントを勝ち抜くことが大変。
本戦では持ち時間8時間の7番勝負を行います。
永世竜王の条件は、連続5期または通算7期のタイトル保持。
渡辺明氏と羽生善治氏が取得しています。
名人
名人戦の主催は朝日新聞社と毎日新聞社。
1年間かけて行われる順位戦のトップリーグであるA級順位戦で優勝すれば挑戦権を獲得できます。
つまり1年ずつ徐々にクラスを上げていかなければ挑戦権を得ることもできないのが名人戦。
本戦では持ち時間9時間の7番勝負を行います。
永世名人はかつて世襲制でしたが、実力制になってからの条件は、通算5期のタイトル保持。
木村義雄氏、大山康晴氏、中原誠氏、谷川浩司氏、森内俊之氏、羽生善治氏が取得しています。
王位
王位戦の主催は新聞三社連合。
まずは予選を戦い、予選の勝者と前期からの勝ち残りの棋士で紅白2組に分かれた挑戦者決定リーグが行われます。
そして紅白それぞれの優勝者同士で挑戦者決定戦を開催。
勝者は本戦で持ち時間8時間の7番勝負を行います。
永世王位の条件は連続5期または通算10期のタイトル保持。
大山康晴氏、中原誠氏、羽生善治氏が取得しています。
王座
王座戦の主催は日本経済新聞社。
予選はすべてトーナメント戦で、1次予選、2次予選、挑戦者決定トーナメントを経て挑戦者が決定。
本戦では持ち時間5時間の5番勝負を行います。
王座に関しては永世ではなく「名誉王座」という称号に。
連続5期または通算10期のタイトル保持が条件で、中原誠氏、羽生善治氏が取得しています。
棋王
棋王戦の主催は共同通信社。
まずは予選が行われた後、予選の勝者とシード棋士で挑戦者決定トーナメントが行われ、挑戦者が決定。
本戦では持ち時間4時間の5番勝負を行います。
永世棋王の条件は連続5期のタイトル保持。
羽生善治氏と渡辺明氏が取得しています。
叡王
叡王戦の主催は株式会社不二家。
2017年に昇格した最も新しいタイトル戦です。
叡王戦では、まず棋士が4段~9段の段位別予選に出場。
段位別予選を勝ち抜いた棋士が本戦トーナメントに進み、その優勝者が挑戦者となります。
この段位別予選は持ち時間1時間で、スピーディーな展開が見どころ。
本戦では持ち時間4時間の5番勝負を行います。
叡王戦は永世称号の規定がなく、取得者はいません。
王将
王将戦の主催は毎日新聞社とスポーツニッポン新聞社。
まずはトーナメントによる1次予選と2次予選が行われます。
2次予選を勝ち抜いた棋士と前期からの残留者の7名で挑戦者決定リーグを行い、1位になった棋士が挑戦権を獲得。
この挑戦者決定リーグは将棋界の中でも非常にレベルが高いリーグとして有名です。
本戦では持ち時間8時間の7番勝負を行います。
永世王将の条件は通算10期のタイトル保持。
大山康晴氏と羽生善治氏が取得しています。
棋聖
棋聖戦の主催は産経新聞社。
かつては序列3位のタイトルでしたが、契約金の引き下げなどで序列が降格。
2009年に序列6位、2015年からは序列8位になっています。
棋聖戦の予選はすべてトーナメント戦。
1次予選、2次予選、決勝トーナメントを勝ち進んだ棋士が挑戦権を獲得し、本戦では持ち時間4時間の5番勝負を行います。
永世棋聖の条件は通算5期のタイトル保持。
大山康晴氏、中原誠氏、米長邦雄氏、羽生善治氏、佐藤康光氏が取得しています。
まとめ
注目度が高く、獲得すれば称号も手に入る8大タイトル戦。
挑戦権を手に入れるだけでも高い壁を越える必要があります。
タイトルを獲得することも守り続けることも非常に困難。
それだけに羽生善治氏が存在する7つの永世称号すべてを獲得したことは、まさに偉業としか言いようがありません。
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