ムエタイは立ち技で最強とも言われる格闘技。
しかし日本人にはあまり馴染みがなく、名前を聞いたことがある程度という人も多いのではないでしょうか。
タイの伝統的格闘技であるムエタイは、なぜ最強だと言われるのでしょうか。
今回は、ムエタイについて解説。
その歴史やキックボクシングとの違い、ルール、そして立ち技で世界最強と言われる理由に迫ります。
ムエタイとは
ムエタイはタイの国技になっている格闘技。
ボクシングと同じように正方形のリングでボクシンググローブをつけて闘う立ち技の格闘技です。
1ラウンドが3分間であることも同じ。
大きく異なる点はボクシングがパンチだけ認められるのに対して、ムエタイではパンチ、キック、肘打ち、膝蹴りが認められることです。
ムエタイのルール
1ラウンド3分のムエタイですが、インターバルはボクシングの1分に対して2分となっています。
諸説ありますが、その理由は2分間のインターバルの間にギャンブラーたちが賭博をするからという説が有力です
攻撃に使って良いのは、ボクシングの両拳に対して、両拳、両脚、両肘、両膝の8か所。
また相手の首を抱え込む首相撲も認められています。
ムエタイの勝敗
ムエタイの勝敗は、ボクシングと同じようにKO、TKO、判定、反則で決まります。
しかし一撃必殺の技が多いムエタイでは、気絶や流血で試合続行が不可能になるTKOや派手なKOが続出。
そして判定の基準も独特です。
ムエタイではボクシングのように3人のジャッジが1Rごとに減点方式で採点を行い、5R終了時に持ち点の多い選手が判定勝ちとなります。
ただしムエタイでは技を美しく、的確に、力強く当てることが重要。しかも難しい技の方が採点は高くなります。
例えばジャブを何度もヒットさせるよりも、難易度の高いハイキックを華麗に決めた方がポイントはずっと高くなるそうです。
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ムエタイの歴史
ムエタイという名前はMuay=格闘技・Thai=タイで、その名の通りタイの格闘技という意味。
そう呼ばれるにふさわしいほど古い歴史を持っています。
ムエタイの誕生
古式ムエタイは13世紀に興ったタイ族初の王朝スコータイで軍隊の実戦に取り入れられた格闘技。
1600年ごろ、ビルマとの戦争をきっかけに若い男子に古式ムエタイが推奨されるようになり、各地にムエタイを教える学校ができました。
この古式ムエタイには4つの種類があります。
・北部地方のムエ・メンライは素早く蹴ることが特徴。
・東北部のムエ・コラートは相手と距離をおき、パンチを連続させるスタイル。
・中央部のムエ・ロッブリーは近距離からパンチを素早く繰り出す形。
・南部のムエ・チャイヤーは肘をつかって相手の蹴りなどを受け止めつつ戦うスタイル。
やがて近代化の中で古式ムエタイは廃れていきますが、1929年にグローブ着用や1試合5ラウンド、1ラウンド3分などのルールが確立され、近代的なムエタイが誕生しました。
そして1956年にルンピニ・スタジアムが完成。
これを機に全国各地から若いムエタイ選手たちが賞金をめざしてバンコクへ集まるようになりました。
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キックボクシングとの違い
ムエタイとよく似ている格闘技にキックボクシングがあります。
このキックボクシングはムエタイを元に日本人が考案したものです。
昔から最強と呼ばれたムエタイには、日本から多くの空手家が挑戦して、その多くが敗退。ムエタイに対抗し、公平な試合をするために1966年に野口修氏がキックボクシングを考案しました。
キックボクシングはムエタイにボクシングや空手の要素を取り入れ、ルールを近づけたものなのです。
しかし歴史の浅いキックボクシングの定義は曖昧。ムエタイに近いものからK-1のようなものまで、大会や団体によってさまざまなルールが採用されています。
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ムエタイが立ち技最強と言われる理由①:多彩な攻撃
長い間立ち技最強と言われ続けているムエタイ。
その強さの最大の秘密は一撃必殺の技が多彩であることです。
ムエタイでは拳、脚、肘、膝を攻撃に使用でき、他の格闘技にはない危険な攻撃技も豊富。それを防御するためのテクニックも磨き抜かれています。
パンチ
多くの格闘技にもあるのがパンチ。ムエタイの基本のパンチはジャブ、ストレート、フック、アッパーカットで、ボクシングとほぼ同じです。
そのためパンチ単体でムエタイの強さを語ることはできませんが、キックなど他の技も使えるところがポイント。
コンビネーションで攻撃してくるため防御が難しく、パンチが強力な武器になります。
キック
金的以外どこを蹴っても良いのがムエタイのルール。
ローキック、ミドルキック、ハイキックのほか、足の母指球あたりで蹴り込み、相手との間合いを測りつつ攻撃する前蹴りもあります。
パンチのジャブのように前蹴りで空間を支配して試合を進めることができるのです。
肘打ち
ボクシングでは危険な技として反則になる肘打ちもムエタイでは認められています。
肘打ちはヒットすれば大きなダメージを与える技。裂傷でドクターストップのTKO勝ちもよくあります。
肘はパンチよりもリーチがなく、技の難易度は上がりますが、ムエタイの選手は肘打ちの技を磨き、一撃必殺の技にしているのです。
膝蹴り
膝蹴りもムエタイの特徴的な技。近距離からボディに打ち込むほか、飛び膝蹴りで顔面も狙います。
この膝蹴りが恐ろしい理由は、次の首相撲というルールがあるからです。
ムエタイが立ち技最強と言われる理由②:首相撲
ムエタイが最強と言われる大きな理由が首相撲です。
首相撲は相手の首を抱えるようにして行う攻防。ボクシングやキックボクシングではクリンチとなって引き離されることになります。
ところがムエタイでは首相撲は反則ではありません。
それどころか首を抱えたまま強烈な膝蹴りを繰り出すことができるのです。
首相撲のテクニックに長けた選手と対戦すると、身動きを封じられたまま、ボディをえぐるような膝蹴りを連続で入れられることに。
さらには首相撲の状態から相手を投げ飛ばす攻撃も認められています。
首相撲はムエタイを最強の格闘技にしているテクニックなのです。
ムエタイが立ち技最強と言われる理由③:ハングリー精神
賭け事の対象にもなっているムエタイはスポーツというよりは命をかけた真剣勝負。
タイのムエタイ戦士の多くは、幼い頃から家計を助けるためにムエタイでお金を稼いでいます。
負ければ家族を支えることができないという過酷な状況も珍しくはなく、そのハングリー精神が彼らを最強の戦士にしているのです。
まとめ
長い歴史を持ち、タイの国技になっているムエタイ。
そこには多彩な攻撃とそれを受け止める華麗な技、首相撲からの膝蹴りを認めるという独自のルールがありました。
そこにハングリー精神が加わることによって立ち技最強と言われる格闘技に君臨しているムエタイ。
今後、これを超える立ち技格闘技が登場することはあるのでしょうか?
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