2022年11月23日夜、日本中が歓喜に包まれました。
サッカーのワールドカップ・カタール大会、グループEの日本が1次リーグの初戦で、前々回大会優勝のドイツに勝利したのです。
この一夜が「ドーハの奇跡」と呼ばれる理由は何か、そして奇跡の一夜の経緯を詳しく解説します!
ドーハの奇跡の背景
そもそもなぜこのドイツ戦の勝利が「ドーハの奇跡」と呼ばれるのか、まずはその背景からご紹介します。
ドーハの悲劇
「ドーハの奇跡」という言葉は、サッカーファンならもちろん「ドーハの悲劇」に対応する言葉であることを知っているはず。
1993年10月28日に行われたワールドカップアメリカ大会アジア地区最終予選の最終戦。日本代表チームは後半ロスタイムに失点したことで3位に転落し、予選敗退に終わったのです。
この4年後、奮起した日本代表はマレーシアのジョホールバルで開かれたアジア第3代表決定戦で勝利し、ついにワールドカップ本大会への初出場を決めました。「ジョホールバルの歓喜」と呼ばれるこの勝利以降、日本は7回連続の本戦出場を実現。
つまり「ドーハの悲劇」は日本がアジアの常勝国に生まれ変わる原動力だったといえます。
そして奇しくもドーハが舞台となった2022年のワールドカップ本戦は、「ドーハの悲劇」へのリベンジの意味もある大会だったのです。
前評判
優勝候補の一角でもあるドイツに対して、対戦前の日本は圧倒的に不利と言われていました。
日本は過去のワールドカップで優勝経験国に勝利したことは一度もなし。
イギリスのブックメーカー最大手「ウィリアムヒル」は試合の直前に、予想オッズとして日本の勝利が7倍、ドイツの勝利が1.44倍、引き分けは4.5倍と発表しました。
つまりほぼ確実にドイツ勝利だという予想。
世界中の専門家もドイツの勝利を疑っていませんでした。
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ドーハの奇跡 試合経過
2022年11月23 日の日本時間22:00にドーハのハリファ国際スタジアムで始まったグループE・1次リーグの初戦、日本対ドイツ戦。
日本は以下の先発メンバーで挑みました。
【GK】権田修一
【DF】板倉滉 長友佑都 酒井宏樹 吉田麻也
【MF】遠藤航 久保建英 伊東純也 鎌田大地 田中碧
【FW】前田大然
前半
試合前半はほとんどの時間、ドイツがボールを支配。日本の右サイドを崩して攻め上がる展開になります。
日本の最初の大きなチャンスは前半8分。
鎌田選手がボールを奪って右サイドの伊東選手にパスし、中央に走り込んだ前田選手が相手を抜き去ってゴールを決めたように見えました。
しかしこれはオフサイド。得点にはなりません。
その後はドイツがボールをキープして攻め上がる展開。日本は組織的な守備でなんとか耐え続けます。
前半20分にはキミッヒ選手がペナルティーエリア外から強烈なミドルシュート。前半28分にはギュンドアン選手がミドルシュートを放ちますが、ゴールキーパーの権田選手がセーブします。
この時間までのボール支配率はなんとドイツが90%で、日本はわずか10%。
さらに度重なる攻撃を日本の守備陣はなんとかクリアしてきましたが、前半31分、ゴールキーパー権田選手がドイツのラウム選手を倒してしまいます。
このプレーでドイツはペナルティーキックを獲得。前半33分、ギュンドアン選手がペナルティーキックをゴール中央に決めてドイツが先制しました。
さらに前半42分、前半45分にもドイツは猛攻。4分と表示された前半アディショナルタイムの終了間際には、ハバーツ選手のシュートが日本のゴールに入ります。
しかしここはVARによるビデオ判定でオフサイドに。
そして0対1のドイツリードで前半が終了しました。
前半終了までの状況
前半終了時点でのボール支配率はドイツが72%。
シュートはドイツが13本(枠内4本)で、日本はわずか1本(枠内0本)。
事前の予測以上に日本にとって苦しい展開となりました。
しかもドイツはハーフタイムまでリードした試合では1978年大会のオーストリア戦以降、44年間21試合無敗を記録。
データ上ほとんどドイツの負けはあり得ない状況となってしまいました。
しかし前半を終えたところで森保一監督は「粘り強く戦えている。プランどおり戦えている」と発言。
1点ビハインドの状況の中、ベンチで出番を待っていた南野拓実選手、堂安律選手、浅野拓磨選手は「このままならいける」と話していました。
後半
日本は後半開始時にMF久保建英選手をDF冨安健洋選手に交代。これによってディフェンスラインを3バックに変更しました。
ドイツが予想し、対策してきた日本の4バックを3バックに変更したこの作戦は相手を慌てさせます。
さらに後半12分にはDF長友佑都選手に替えてMF三笘薫選手、FW前田大然選手に替えてFW浅野拓磨選手を投入。
その結果、後半13分には伊東選手の右からのクロスに入ったばかりの浅野選手が頭で合わせるなど、日本が攻撃に転じる機会が増加します。
一方の守備陣は、後半26分にゴールキーパー権田選手が4連続の好セーブ。この時間帯も猛攻のドイツに追加点を許さずしのぎました。
後半26分に日本はMF田中碧選手に替えてMF堂安律選手を投入。後半30分にはDF酒井宏樹選手に替えてMF南野拓実選手を投入し、5人のメンバー交代枠を使い切ります。
この交代で日本の超攻撃的な布陣が完成。
そして迎えた後半30分、一気に攻め上がった日本は三笘選手のパスを受けた南野選手がゴール左側からシュート。そのこぼれ球を堂安選手が左足で押し込み、同点に追いついたのです。
「俺が決める、俺しかいない」という堂安選手の強い気持ちが生んだゴールでした。
さらに後半38分、今度は板倉選手からのロングパスを浅野選手が右サイドからゴール前に持ち込みます。浅野選手はゴールのほぼ真横からここしかないという一点に右足でシュートを放ち、日本は逆転!
その後、7分の長さとなった後半のアディショナルタイムでも日本は何度となくゴール前に迫るドイツの猛攻をしのぎ続けます。
ドイツは最後にはゴールキーパーのマヌエル・ノイアーまでが攻撃に参加。
しかし日本は一丸となって守り続け、ついに歴史的な逆転勝利を収めたのです。
まとめ
「ドーハの奇跡」として今後長く語り継がれるに違いない日本対ドイツ戦。
最終的なボール支配率はドイツの72%に対して日本は28%、シュートはドイツの24本(枠内9本)に対して日本は11本(枠内3本)でした。
ドイツのハンジ・フリック監督が「日本は素晴らしいチーム。よくまとまっていた。彼らはより効率の良いプレーをした」と語った通り、日本は数少ないチャンスを確実に得点に結びつけ、勝利をつかんだのです。
「ドーハの悲劇」が日本サッカーの新たな一歩のきっかけとなったように、「ドーハの奇跡」は日本サッカーに新しい時代をもたらす一夜となるかもしれません。
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