氷の上で美しく舞い踊る、氷上競技の花形とも言うべきスポーツ、それがフィギュアスケートです。
近年は幼いうちからフィギュアを始める少年少女も少なくなく、幼少期から研鑽を積んできた若者たちが次々とオリンピックで華々しいデビューを飾っています。
そんなフィギュアスケートで私達が心踊らされるのは、鮮やかなステップやジャンプで構成された選手達の演技です。
しかし、選手達の演技と同じように目を魅かれるものがもう一つあります。それは、選手たちの美しい衣装です。
フィギュアスケートの衣装は、一般の衣服とは構造からして大きく異なります。
どのような規定があるのでしょうか?そして、どういった人が衣装を作っているのでしょうか?
今回は、そんなフィギュアスケート衣装の秘密についてご紹介します。
【フィギュアスケート】衣装の規定
選手の演技を彩るだけのもの、と侮るなかれ、実はこの衣装にも厳しい規定がいくつもあります。もし規定に違反していることがわかった場合、1.0もの減点を貰ってしまうことに。
これは、演技中に転倒したのと同程度のマイナスです。
フィギュアスケートの衣装に関して特に求められるのは“品性”であるとされています。
例えば過度な露出、裸を連想させるような衣装を着てはならないとされているのです。それこそ肌色の布で覆われていても、裸体を連想させるものはNGであるとされます。
また、衣装そのものとは別に男子の場合はわき毛が見えてはいけないとされています。ノースリーブ衣装を着る場合、わき毛を綺麗に処理しておかなければいけません。
また、アイスダンスの場合、女子のスカートに三か所以上スリットがあってはいけないということになっています(その上で、スカートを履かなければいけないそうです)。
また、上半身の半分以上を布で覆うこと、とも定めてられています。
他にも、男子はタイツではなくズボン(それも長ズボン)を履かなければいけないこと。
仮面や小道具を身につけるような衣装ではないこと。衣装の一部が氷上に落ちないこと、などが厳しく規定されているのです。
【フィギュアスケート】衣装の仕組み
では、そんなフィギュアスケートの衣装はどんな仕組みになっているのでしょうか。
そもそも、「演技を見ているだけでは構造もわからないし、なんならどうやって着るのかもよくわからない」と首を傾げる人も多いことでしょう。
それこそ、非常に薄くてキラキラした衣装が多く、体が透けてしまわないか心配になるという人もいるかもしれません。
女性の場合、衣装はこのように身につけるとのこと。
まず下着を身に着け、その上にタイツを履きます。そしてブーツカバーを履いた後、衣装を着るのだそうです。ちなみに下着の線が目立ってしまうことを気にして、下着を履かない選択をする選手もいるのだとか。
ちなみに、ブーツカバーというのはスケート靴まで覆いかぶさって履いているタイツのことを言うそうです。なお、ブーツカバーと下着が一体化しているものを着ている人もいます。
男性の場合もまた、下着には気を遣うと言います。とにかく、外に透けない、目立たないものを着るのが鉄則だとか。
男性はボクサータイプの下着かTバッグタイプ、あるいは何も履かないことにする、のどれかを選択するのだそうです。
【フィギュアスケート】衣装のお値段
「あれだけ華やかでお洒落な衣装の数々、きっと凄いお値段なのでは?」と考えている人は多いことでしょう。
実際、その価格はピンからキリまであるとされています。既製品を用いるか、オーダーメイドにするかでも大きく変わってきます。
例えば女性用のワンピースタイプの衣装なら1万円台から、男性の場合(トップスとパンツ)は2万円台からというのがおおよその平均価格とされています。これは既製品の値段ではありますが、思ったほど高くないなと感じる人もいるのではないでしょうか。
もちろん、オーダーメイドで美しい衣装を一つ一つ作って貰っているトッププロの方々ならば、衣装にも当然お金がかかっています。
どの選手のものか、は明言していないそうですが、数々のトップ選手の衣装を作ってきた衣装デザイナーの伊藤聡美さんによると、一番高かった衣装は53万円くらいだったとのこと。
勿論、一着の値段です。これが何着もともなれば、どれほどの金額になるのか想像もつかないほどでしょう。これよりもっと高い衣装もあるかもしれないともあれば尚更です。
伊藤さんによれば、選手の演目の世界感に合わせた衣装を目指しつつも、動きの邪魔にならず、かつ選手の体がより美しく見えるようになどを考慮して衣装を制作するとのこと。
華やかな装飾を施しつつも、衣装の重さは女子で300g、男子は800gほどで仕上げるそうです。男子の衣装の方が若干重いようです。
ちなみに、フィギュアはスケート靴にもお金がかかる競技です。一足なんと12万円ほどするのだとか。
既製品の衣装の価格と比較するのであれば、スケート靴の値段の方が高いということになります。
【フィギュアスケート】衣装が出来るまで
では、オーダーメイドで衣装を作ろうとなった時、選手たちはデザイナーにどのような注文をするのでしょうか。
元フィギュアスケート日本代表である中野友加里さんによると、まずデザイナーに伝えるのは自分が演技する曲名だそうです。
これは曲のテイストで、衣装で表現する世界観を掴んでもらうため。もちろん、自分の希望の色と採寸を伝えることも忘れてはいけません。
同時に、フィギュアの衣装ならではの注意点もあります。先述した衣装としての規定を守ってもらうことのみならず、中野さんは「重いものをつけて跳ぶと、体重と同じでそのまま余分な重さになるため、キラキラと光るストーンの素材も軽さ重視。
技術面で影響が出るため、軽量化するようお願いしました」と語っています。
オーダーメイドで海外のプロデザイナーに依頼する場合、最低でも10万円は予算を見込んでおかなければならないとのこと。
やはり、拘りのある衣装であればあるほどお金はかかってしまうようです。
繊細な衣装は、作って貰ったあとも大変だと言います。激しく動き回る競技であるフィギュアスケートは汗をかきやすく、汗で色が変わってしまうのが大変であるとのこと。
また、軽量化を求め過ぎた結果、ジャンプの転倒で破れてしまったこともあるそうです。
洗う時も当然通常通り洗濯機で回せず、全て手洗いかつスチームアイロンをかけていたとのこと。軽い分皺になりやすい衣装は、管理にも充分気を付けなければいけないそうです。
まとめ
いかがだったでしょうか。
現在はフィギュアスケート衣装の規定が男女で大きく異なっていますが、これからは時代の流れに合わせて規定が共通のものに変わっていくかもしれません。
衣装ではありませんが、かつては“歌入りの曲はNG”だったものが改定されてOKになったように、衣装や道具、それに関わるルールも日々進化していくものです。
華やかであるのみならず、多くの人の苦労と努力の結晶であるフィギュアスケート衣装。
今後は演技を見るのみならず、そんな衣装にも注目して観戦してみるのも非常に楽しいのではないでしょうか。
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