日本発祥の武道のひとつが空手。
世界にも広まったその流派は数百にもなり、正確な数は把握しきれないほどだと言われています。
しかしその種類は大きく分ければ2つになることをご存じでしょうか。
今回は、2種類の空手の違いについて解説します。
【空手】代表的な2種類
空手は大正の終わりから昭和の初めに沖縄で誕生したもの。
2種類の空手のうち、まずは現在伝統空手と言われているものが誕生しました。
2種類の空手がある背景
戦前の空手は「形」(演武)を重視するもの。
直接対戦する試合もありませんでした。
それはルーツである沖縄空手に試合という発想がなかったからです。
空手は護身術であるとともに、自己鍛錬の手段。
向き合うのは自分自身で、「人に打たれず、人打たず、事なきをもととするなり」という思想だったのです。
しかし戦後になり、弟子たちの間から組手の試合をしたいという声が上がります。
そこで安全面を重視して採用されたのが寸止めによる組手の試合でした。
相手に当てることなく攻撃を止めることで、安全に組手を行ったのです。
その「寸止め」に異議を唱えたのが、松濤館流を経て剛柔流を学んだ大山倍達氏。
彼も最初は寸止めで試合を行なっていました。
しかし「自分の攻撃でダメージを与えられたどうかは、実際に相手の体を叩いてみないと判らない」という考えから「直接打撃制(フルコンタクト)」を提唱。
昭和29年に大山道場を設立しました。
こうして実践空手の誕生。
実践空手にも多くの流派が生まれ、空手は伝統空手(ノンコンタクト)と、実践空手(フルコンタクト)という2種類に分かれて発展してきたのです。
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主な違い
伝統空手と実践空手という名称から、伝統空手の方が圧倒的に古いという印象を持たれることもありますが、実は空手自体が比較的新しい武道。
誕生時期に大きな開きがあるわけではなく、最も大きな違いは「寸止め」か「直接打撃」かということになります。
【空手】伝統空手
では寸止めを基本とする伝統空手には、他にどのような特徴があるのでしょうか。
主な特徴
一言で伝統空手といっても、松涛館流、剛柔流、糸東流、和道流など数多くの流派があり、特徴も同じではありません。
しかし、形の練習を重視すること、琉球空手から続く哲学や礼節を重視することが共通した主な特徴。
組手のルールも流派によって違いますが、主な大会では全日本空手道連盟(JKF)のルールを採用しています。
このルールでは、「寸止めしていなかったら相手を倒していた」といえる効果的な攻撃に対して、有効は1ポイント、技ありは2ポイント、一本は3ポイントが与えられる決まり。
そして相手に直接打撃を与える行為は反則です。
反則行為への警告には段階がありますが、反則の内容によっては一発で反則負けとなってしまうこともあります。
オリンピックの正式競技
伝統空手は古くから国際大会が積極的に行われてきたのも特徴。
1970年から2年に1度開催されている世界空手道選手権大会は伝統空手の大会であり、東京オリンピックの正式競技になったのも伝統空手でした。
オリンピックではルールはJKFのものを採用。形と組手の2種目が行われました。
【空手】実践空手
一方の実践空手は、直接打撃を認めることで実際の戦いでの攻防を重視している空手。
実践空手にも極真会館、新極真会、極真館、正道会館、大道塾など多くの流派があり、細かなルールは違いますが、共通した特徴も持っています。
主な特徴
形の練習もありますが、形よりも実践を重視するのが特徴。
ルール的には相手にダメージを与えてダウンさせることを狙います。
相手を3秒以上ダウンさせるか、戦意喪失させれば1本勝ちです。
よりダメージを与えるために体重を乗せて突きや蹴りを行うため、危険度が高いことは事実。
しかし互いに痛みを理解し合うことで精神的な強さを養うという狙いもあります。
JFKO
実践空手には長い間、課題がありました。
それは流派が分散しているため、国民的スポーツとして認知されないこと。
そのため2013年、実践空手の初めての統括団体として公益社団法人全日本フルコンタクト空手道連盟(JFKO)が結成されました。
JFKOは統一ルールを定めることで、フルコンタクト空手の競技を確立。
日本体育協会(体協)に加盟すると同時に世界各国でも展開して国際的な組織となりました。
その大きな目的は、フルコンタクト空手のオリンピック種目化。
すでに採用されているノンコンタクトによる組手と並行して、フルコンタクトルールの種目導入に向けて活動を続けています。
まとめ
現在大きく2種類に分けられる空手。
その最も大きな違いは、空手というものに対する思想の違いです。
「空手に試合はない」という理念からスタートし、組手の導入後も寸止めを基本としているのが伝統空手。
それに異を唱え、より実践の場で活かせるようにと直接打撃を行うのが実践空手です。
空手を学ぶ場合、まずはどちらを選ぶかが大きな分かれ目。
さらにその先にも多くの流派があり、さまざまな哲学・思想が存在します。
入門する前には、自分に向いているのはどのような空手なのか、じっくり検討しするのがお勧めです。
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